2010 Fiscal Year Annual Research Report
企業成長と資源配分-マイクロデータを用いた実証研究-
Project/Area Number |
21730203
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Research Institution | Toyo University |
Principal Investigator |
滝澤 美帆 東洋大学, 経済学部, 講師 (50509247)
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Keywords | 成長会計 / 金融危機 / 無形資産 / TFP |
Research Abstract |
少子高齢化が進み、労働力人口の低下した資源の乏しい日本において、どのように無形資産を蓄積、活用すべきかといった問題は早急に探究されるべき課題と考えられる。本研究では、この無形資産投資の分析をマクロ・レベル、また企業レベルにおいて日本に適用した場合の実証結果について考察している。 平成22年度は宮川努教授(学習院大学)らと共同で、無形資産に関するマクロ・レベルの分析を行った。分析では、無形資産蓄積を標準的なRBCモデルに組み込み、産出や労働時間の動向を日韓で比較、分析した。 日本と韓国は、1997年にそれぞれ金融危機、国際通貨危機という共に大きな経済危機を経験した。しかし、その後、韓国が順調な回復と成長を達成した一方で、日本では依然経済停滞が続いている。こうした両国における経済パフォーマンスの差、特に生産性格差はなぜ生じたのかを、本研究では、McGrattan and Prescott (2005, 2010)による無形資産蓄積を考慮したモデルを使って説明した。結果は以下の通りである。 全般的に無形資産を考慮したモデルのシミュレーションは、無形資産を考慮しないケースよりも日韓の労働時間の動きを良く説明している。このシミュレーションから計算される無形資産部門の割合は、日本が10%、韓国が7%程度である。このシミュレーションを使って、金融危機前後における経済成長の要因を比較すると、日本では金融危機を経て経済成長の鈍化が続いており、有形資産、無形資産とも寄与率が低下している。一方韓国では、金融危機以前は有形資産蓄積を中心とした要素投入型の経済成長であったが、金融危機後は無形資産の寄与率が上昇し、合わせてTFP上昇率もさらに加速しており、日本とは対照的な成長パターンとなっていることがわかった。日韓は1990年代の後半に厳しい金融危機を経験したが、韓国はいち早く雇用制度の見直しなど構造改革を進めたため、無形資産の蓄積も進みTFP上昇率も加速したと考えられる。このことは、金融危機のような深刻な経済全体の危機から脱出するためにはどのような政策が望ましいかということについて重要な情報を提供している。
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