2011 Fiscal Year Annual Research Report
企業成長と資源配分-マイクロデータを用いた実証研究-
Project/Area Number |
21730203
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Research Institution | Toyo University |
Principal Investigator |
滝澤 美帆 東洋大学, 経済学部, 准教授 (50509247)
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Keywords | 生産性 / ミクロデータ / 参入・退出 / 物的TFP |
Research Abstract |
生産性上昇は、少子化、高齢化によって労働人口が減少する今後の日本における主要な経済成長の源泉である。また、生産性は、物的資本、人的資本の収益率に影響を及ぼし、設備投資、教育投資の動向を左右する肝要な指標である。 ミクロデータを使用した先行研究では、企業の参入・退出行動や産業間の移動を考慮することによって、マクロレベルで計測された生産性が大きく左右されることを実証している。こうした分析において、いわゆる生産性の高い企業が退出し、生産性の低い企業が産業内に滞留するという負の退出効果があることが示されているが、その要因については検証されていない。本研究では、新たなTFPmeasureの計測を試み、そもそも生産性の高い企業(事業所)が産業参入から退出しているかどうか、従来型のTFPと比較しながら分析を行う。具体的には、従来型のTFPは個別企業(事業所)の名目産出額を産業別のデフレータで割った値を実質産出額として利用しているが、このような方法をとるとTFPに需要ショックが混在する可能性があるため、出荷数量と出荷金額を利用した新たな物的TFPを計測し、企業の成長、参入・退出要因の再推計を行った。 その結果、純粋に技術的な効率性に着目すれば、事業所間の生産性格差は、これまで以上に大きく、技術的要因による参入・退出は供給サイドの生産性変動の最も重要な要素であることがわかった。したがって本研究の結果は、技術的に優位性のある新規企業の参入を促し、これを育成していく政策の妥当性をこれまで以上に裏付けるものとなっている。同時に、本論文では需要要因が生産性変動や退出行動に深く関わっている事を示しており、どのような産業に需要を配分していけばよいかということが、経済全体の生産性の向上に大きな影響を与える可能性を示唆している。
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