2010 Fiscal Year Annual Research Report
ボランティア労働供給量による森林資源の経済評価:一般化端点解モデルの応用
Project/Area Number |
21730210
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
寺脇 拓 立命館大学, 経済学部, 准教授 (90330018)
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Keywords | 環境評価 / 顕示選好 / ボランティア労働供給 / 森林資源 |
Research Abstract |
本年度は、昨年度展開した、森林保全を目的とする自発的な労働供給行動に関する一般化端点解モデルを用いて、森林生態系に対する選好を記述する効用関数を推定し、その価値を経済学的に評価することに取り組んだ。まず、兵庫県の森林ボランティア団体「ひょうご森の倶楽部」より、2009年度にこの団体によって活動が行われた22箇所の活動地のうち、その中の19箇所について、各会員の居住地と活動日数のデータを提供して頂き、それらを用いて森林生態系に対する効用関数を推定した。各会員の居住地から各活動地までの往復距離/時間の計測には、(株)日経リサーチの協力を受け、「住友電気工業社製のデジタル道路地図」に基づくGISを利用した。加えて「ひょうご森の倶楽部」の会員を対象としたアンケート調査も行い、居住地だけでなく、年齢や性別など個人の社会経済属性の情報も収集し、そうした個人属性を考慮した一般化端点解モデルの推定にも取り組んだ。推定に利用可能なサンプルのサイズは172であった。分析の結果、昨年度、2002年度の活動データを用いて試行的に行った推定結果と同様に、里山林が人工林、あるいは人工林と里山林との混合よりも強く選好されること、植林活動は労働強度の高さから効用に負の影響を与えることが示されたが、遊歩道整備については、昨年度の結果とは異なって、効用に負に作用する結果となった。また、個人属性を考慮したモデルを推定することで、男性、そしてより若い人の方が森林保全に強い選好持つという新たな知見も得られた。本研究は、これまでは顕示選好データからは計測不可能と考えられてきた森林生態系に対する非利用価値を、ボランティア行動データを用いることで計測可能になることを示した点で大きな意義がある。
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