2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21730220
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
安井 健悟 Ritsumeikan University, 経済学部, 准教授 (80432459)
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Keywords | 資産蓄積 / 金融計画 / 貯蓄計画 / 労働供給 / 労働時間 / 人事・労務管理制度 / 人的資本 / 教育のリターン |
Research Abstract |
1.資産蓄積についての研究 一般的な経済的、人口学的特徴や選好パラメータでは説明できない家計の資産のばらつきを金融計画が説明するという仮説について、日本のマイクロデータを用いて検証した。OLSの推定結果からは、金融計画のひとつである貯蓄計画を立てることと資産の関係は統計的に有意であるが小さいことが確認されたが、内生性によるバイアスを除去するための2SLSによる推定値はOLSの推定値と比べてかなり大きくなることが確認された。因果関係の意味で、貯蓄計画は資産蓄積に十分大きな影響を与えるということである。 2.労働供給についての研究 労働時間と労働のインテンシティ(強度・集中度)の決定要因として、長時間労働抑制施策・成果主義などの人事・労務管理制度と上司のあり方を取り上げ、その影響について実証的に分析した。その結果、部下の長時間残業の状況を管理監督者の評価項目にすると労働時間を短くするがインテンシティを高めることが確認された。他方で、成果主義的な制度は労働時間を長くするがインテンシティを高めないことが確認された。また、金銭的なインセンティブのみでなく、「小集団活動や提案制度(投書箱、目安箱)」や「表彰制度」という非金銭的な制度上の工夫がインテンシティを高めることも確認された。 3.人的資本への投資の収益についての研究 人的資本への投資の収益を計測するために、因果関係の意味で教育年数が賃金に与える効果を推定することを目的とし、大阪大学21世紀COEプログラム「アンケート調査と実験による行動マクロ動学」によるパネルデータと日本版General Social Surveysによるデータセットを用いて分析を行った。能力変数や家庭環境変数を制御することにより、出来る限り欠落変数バイアスを除去した結果、教育年数1年の収益率は約4~5%であり、従来の計測結果よりも小さいことが明らかとなった。
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