2011 Fiscal Year Annual Research Report
ミクロデータを活用したサブプライムローンの融資実態に関する実証研究
Project/Area Number |
21730226
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
豊福 裕二 三重大学, 人文学部, 教授 (70345966)
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Keywords | サブプライムローン / 差し押さえ / 住宅市場 / アメリカ経済 / カリフォルニア州 |
Research Abstract |
当初研究課題として設定したのは、ミクロデータを活用したサブプライムローンの融資実態に関する分析であったが、先行研究をサーベイするなかで、住宅の差し押さえが、サブプライムローンにとどまらず、プライムローンを含む住宅ローン全般の問題へと拡大し、研究者の問題関心がこうした「住宅差し押さえ危機」の実態分析と政策対応へと変化していることを知った。そこで今年度は、昨年度に実施したカリフォルニア州ロサンゼルスでの実地調査の結果をふまえ、同地域における住宅差し押さえ危機の実態と、差し押さえ問題が長期化している構造的要因についての分析に重点を置いた。具体的には、カリフォルニア不動産業者協会(CAR)の保有する中古住宅(差し押さえ物件を含む)の取引データや、民間調査会社であるCampbell Communication社の発行する、差し押さえ物件の売買データ(Housing Pulse Tracking Survey)を入手し、その分析を行った。 その結果、第1に、同地域における中古住宅の取引において、依然として差し押さえ物件の取引が圧倒的な比重を占めており、それが住宅価格の下方圧力となっていること、第2に、差し押さえ物件のなかでも、とくに再利用のために修繕を要する物件の価格が低く、これらの取引においては投資家による投機目的のまとめ買いが中心となっていること、第3に、そうした投資家による差し押さえ物件の買い占めと物件の放置が、地域における住宅再生の障害となっていることが明らかとなった。これらの結果は、アメリカの住宅市場が長期に渡って低迷を続けていることの背景に迫るものとして重要である。以上の知見については、和歌山大学の研究ユニットである土地政策研究会や、立教大学アメリカ研究所主催の公開シンポジウムにおいて発表するとともに、日本地域経済学会金沢大会の自由論題報告において発表した。また、公表論文としては、近日中に学会誌等に投稿する予定である。
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Research Products
(3 results)