2009 Fiscal Year Annual Research Report
中国企業間信用の探求-他のオルタナティブ金融との比較において-
Project/Area Number |
21730229
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
矢野 剛 The University of Tokushima, 大学院・ソシオ・アーツ・アンド・サイエンス研究部, 准教授 (90314830)
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Keywords | 企業間信用 / 開発金融 / 法制度 |
Research Abstract |
平成21年度科学研究費補助金の交付を受けた研究において、我々は以下のような研究成果を得た。 今年度は、中国内の後進地域であり企業間信用の発達においても立ち後れている陜西省および寧夏自治区における企業間信用に関する初歩的な計量分析および現地聞き取り調査により、後進地域における企業間信用の実態についてある程度明らかにすることができた。 第一に、陜西省における企業マイクロデータによる計量分析の結果、中国後進地域における企業間信用は民営企業・中小企業から国有大企業へ資金を流出させるように機能しており、当該地域における新規企業の市場参入・成長をむしろ阻害する効果をもっていることが明らかになった。これは先進的な沿海部のそれとは対照的な観察結果である。但し、国有企業よりも民営企業・中小企業の方が資金源としての企業間信用に強く依存する傾向も観察され、これは先進地域と共通している。これらの成果の一部を学術誌に論文として公表することが出来た。 第二に、陜西省・寧夏自治区をフィールド対象として、「何故当該地域企業間信用の発達は後れているのか」を関心の中心に据えた企業・金融機関聞き取り調査がおこなわれた。その結果、当該地域においては先進地域とは異なり、手形の譲渡・受取が一種の不良債権の押し付け合いと企業に捉えられており、契約の遵守保証を含む法制度への信頼感が低いことが明らかになりつつある。また、民営企業・中小企業を中心として、その資金源として企業間信用以外のオルタナティブ金融-企業間貸借など-にも強く依存する傾向がみられることも明らかにされた。この成果を次年度の計量分析の基礎とする。
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