2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21730243
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Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
玉田 桂子 福岡大学, 経済学部, 教授 (80389337)
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Keywords | 生活保護 / 労働供給 / 社会保障 |
Research Abstract |
パート賃金で実質化した生活保護基準が生活保護受給世帯の就業率に与える影響を分析した。生活保護制度においては、稼働能力があるものは稼働能力を最大限に活用するものとされているが、高い生活保護基準は労働意欲をそぐのではないかとの懸念もある。その懸念の原因として、生活保護を受給しながら就労しても、収入の増加はわずかであることが挙げられる。しかし、生活保護世帯の就労状況について厳密に分析した研究はほとんどない。因果関係の意味での生活保護世帯の就労状況についての分析がほとんど行われないまま、2005年より自立支援プログラム策定することなどが政策として行われてきたが、まずは現状を把握することは非常に重要である。 そこで、生活保護基準が生活保護受給世帯に影響を与えているか否かを分析した。生活保護基準が生活保護受給世帯の就業率に影響を与えていなければ、生活保護受給世帯は収入の多寡に関わらず就労を行っていることになり、生活保護制度は問題なく機能していることになる。他方、他の条件をコントロールした上でも生活保護基準が高いほど生活保護受給世帯の就業率が低いことが観察されれば、生活保護制度が労働意欲を削いでいることになる。分析の結果、生活保護基準はおおむね就業率に影響を与えていないことが示された。これは、生活保護制度がうまく機能していることを示している。つまり、生活保護制度は収入の増加によって就労意欲を引き出すシステムであるとは言い難いが、そもそも稼働能力がある人々は生活保護を受給することが難しいため生活保護基準が影響していないと考えられる。 また、上記の分析では集計データを用いて分析を行っているため、どのような個人が就労に至っているのか詳細な情報を得ることができない。そのため、個票データでの分析も行った。分析の結果、生活保護などの社会保障を受けている人々の就労確率は社会保障を受けていない人々に比べて低いことが示された。
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Research Products
(4 results)