2011 Fiscal Year Annual Research Report
外国為替市場の流動性と情報効率性のマイクロストラクチャー分析
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21730253
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
岩壷 健太郎 神戸大学, 経済学研究科, 准教授 (90372466)
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Keywords | オーダーフロー / 為替相場 / ファンダメンタルズ / 私的情報 |
Research Abstract |
オーダーフローには私的な情報が含まれること、つまり市場参加者によって将来のマクロ指標に関する情報や将来の為替予想が異なっていることが先行研究から明らかになっている。こうした市場参加者の私的情報や予想の違いはこれまで認識されてきたが、データの制約により厳密な分析が不足していた。取引主体別のオーダーフローを使えば、市場参加者が公的な情報にどう反応し、また将来発表されるニュースをどの時点で把握しているのかを分析することができ、各投資家が保有する私的情報の源泉を明らかにすることができる。 本研究では、在英大手銀行の対顧客取引データを使い、市場参加者のオーダーフローが将来発表されるマクロニュースを反映しているかを分析した。将来の為替相場に関する私的な情報を顧客との取引を通じて入手することが多い金融機関は、概して事業会社よりも成長率、鉱工業生産指数、インフレ率といった経済指標の予想力が高く、ニュースとして発表される以前において取引を通じて経済ファンダメンタルに関する私的情報を保有していると考えられる。 また、成長率、鉱工業生産指数といった生産面の経済動向はそれらの指標が未発表の段階であっても金融機関のオーダーフローを通じて価格に反映されている一方で、失業率は事業会社のオーダーフローに反映される度合いが大きいが未発表段階での価格への影響力はそれほど大きくないことが確認された。さらに、ニュース発表時の成長率や鉱工業生産指数の価格への影響力が概して大きくないのは、それらの情報がニュースとして発表されるよりも前に、すでに価格に反映されていることが原因であることが明らかになった。この発見は、為替相場に関する重要なパズルの一つであるファンダメンタル・ディスコネクト・パズル(為替モデルにおけるマクロ変数の低い説明力)を解明する一助となりえる。
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Research Products
(7 results)