2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21730254
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Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
山下 耕治 福岡大学, 経済学部, 准教授 (60346905)
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Keywords | 市町村合併 / 未合併団体 / 財政競争 |
Research Abstract |
当年度における研究目的は、未合併団体の財政行動を実証的に解明することで、地方団体の戦略的依存関係の有無と、その背後にある生成メカニズムを推測するための情報を得ることであった。 分析結果によれば、合併進捗率が高い地域あるいは時点にある未合併団体ほど、公共事業の水準を確保していることが明らかとなった。同時にその過程では、職員給等の経常経費を削減することで、公共事業の財源を捻出するメカニズムを伴っている可能性がある。このような未合併団体の財政行動を財政運営の効率化であると直ちに判別することはできないが、未合併団体が地方債を積み増すことなく合併団体と同水準の公共事業を確保していることを踏まえると、自立に向けた取り組みが未合併団体で活発化しているのかも知れない。そうであるならば、ヤードスティック・モデルの妥当性を示唆するものである。 しかしながら、本研究では、ヤードスティック・モデルが想定するような政治過程を明示的に扱っているわけではない。さらには、本研究の分析結果に対しては、別の解釈が成立するかもしれない。例えば、合併進捗率が高い地域では合併特需によってその地域の経済情勢が好転し、その結果、未合併団体においても財政的に余裕が出たことで、公共事業の財源を確保することができたのかもしれない。あるいは、未合併を選択する団体は高成長地域に外生的に位置しているとすれば、その成長に合わせた新たな街づくりのために、公共事業を確保しているのかもしれない。このような競合する理論モデルの妥当性については今後の検証課題となる。 ただ、合併特例法の政策評価には、本研究で議論したような未合併団体の財政行動にも着目することが必要である。つまり、合併団体に対する(1)規模の経済による経費削減効果と(2)行政内部のパフォーマンス改善のディスインセンティブ効果、そして、未合併団体に対する(3)自立に向けた財政行動に起因する効果を踏まえる必要がある。
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Research Products
(1 results)