2009 Fiscal Year Annual Research Report
失われた10年の銀行の企業救済とショック療法に関する実証的研究
Project/Area Number |
21730259
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Research Institution | Chiba University of Commerce |
Principal Investigator |
鯉渕 賢 Chiba University of Commerce, 商経学部, 講師 (60361672)
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Keywords | 債権放棄 / 法的整理 / インボイス通貨 / 為替リスク管理 / 日本企業 / 失われた10年 |
Research Abstract |
2年間の研究期間の初年度である今年度は、1篇の日本語査読付Discussion paperの刊行と、国内学会1回・国際学会1回の計2回の学会発表を行った。研究課題と研究実施計画に基づいて、2つの分野において研究が進められている。第一は、1990年代末から2000年代半ばにかけての上場企業の債権放棄事例と法的整理事例をサンプルとする研究であり、法的整理と債権放棄の選択と、債権放棄におけるメインバンクの超過負担の決定要因を推定した。推定結果は、過去からの銀行-企業間関係が強いほど債権放棄が選択され、メインバンクは融資比率に対して非対称に大きな債権放棄負担を負って企業救済を主導していたことを示している。日本経済の多くの側面が市場中心の金融システムに移行する中で、メインバンク主導の企業救済が行われ続けたこと強く示唆する結果は、失われた10年において銀行部門の不良債権処理と企業部門の再建の長期化の原因を探る上で極めて示唆的である。第二の研究は、日本の輸出企業のインボイス通貨選択と為替リスク管理に関する研究である。失われた10年の国内市場の低迷は、日本の競争力のある輸出企業をして海外市場への依存度を大幅に高める結果となったが、同時に増大した為替リスクの管理上の問題点を抱えることになった。研究では、日本の製造業の主要輸出企業23社にインタビュー調査を行い、為替リスク管理手法とインボイス通貨選択状況についてのデータを収集し、回帰分析によってインボイス通貨選択の決定要因を解明した。結果は、失われた10年の間にも日本企業がアジアを中心に構築してきた生産販売構造が、日本企業の輸出のインボイズ通貨選択における米ドル依存を高めてきたことを強く示唆するものとなった。
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Research Products
(3 results)