2010 Fiscal Year Annual Research Report
失われた10年の銀行の企業救済とショック療法に関する実証的研究
Project/Area Number |
21730259
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Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
鯉渕 賢 中央大学, 商学部, 准教授 (60361672)
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Keywords | 債権放棄 / 法的整理 / 銀行企業間関係 / 失われた10年 |
Research Abstract |
研究期間の2年目(最終年度)となる本年度は、研究実施計画に関わる研究テーマについて1編の英語論文(単著)の書籍掲載決定、1回の海外学会発表(単独)を行った。2編の英語論文は、共に1998年から2004年にかけての日本の主な債権放棄(私的整理)事例と同期間に法的整理に移行した事例をサンプルとして、債権放棄と法的整理の選択に関する決定要因を分析するものである。近年の大企業の企業再建における債権放棄の選択は、再建企業自身の収益性に加えて過去からの長期継続的な銀行企業間関係の親密度によって決定されている。また、銀行自身の不採算企業への融資戦略、倒産法制の整備や産業再生機構による支援などの新しい企業再建の枠組みも、大企業が債権放棄を選択する誘因に統計的に有意な影響を与えている。 以上の結果は、失われた10年における大企業の債権放棄の大半は、過去からの長期継続的な銀行企業間関係という従来型のメカニズムに従って行われたことを強く示唆している。また、2000年以降の新しい企業再建スキームのいくつかは、銀行の不良債権処理の要因と融資戦略に影響を与えることによって、大企業の企業再建に影響を与えた可能性を示唆している。経済成長の回復が待たれる日本経済にあって、既存企業の生産性の回復に資する金融システムの構築という観点から、本研究課題の政策的インプリケーションを模索することが重要である。
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Research Products
(3 results)