2011 Fiscal Year Annual Research Report
期待形成解明に向けて-ダイレクトアンケート調査による分析
Project/Area Number |
21730264
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
木成 勇介 九州大学, 経済学研究院, 講師 (10509855)
|
Keywords | 期待形成 / アンケート調査 / 楽観的・悲観的期待 / 自信過剰 |
Research Abstract |
本課題の目的は経済学の根幹を成す期待が持つ特徴を解明することである。この目的のもと今年度は、九州大学・大阪大学の学部生を対象に日経平均株価に関する期待を問うアンケート調査を行い、分析を行った。具体的には、期待と実現値との乖離、期待の分散、期待と資産保有行動及び感情が期待に与える影響について分析を行った。 昨年度の分析により得られた、株価が上昇基調にある場合にはその上昇度合いを、下降基調にある場合にはその下降度合いを過少に予測するという結果と、分散を過少に見積もる傾向があるという結果を、現状維持バイアスという一つのバイアスで解釈可能であることを報告する論文を執筆し、ディスカッションペーパーとして公刊後、学術誌に投稿した。種々の期待バイアスに対して一つの源泉を提起した初めての論文である。 さらに、最悪と最善のケースの期待が個人の危険資産保有行動に与える影響を分析し、最悪のケースの期待は危険資産比率に大きな影響を与える一方、最善のケースの期待は影響を与えないことを明らかにした。これをまとめた論文は九州大学の紀要「経済学研究」に掲載されている。 また、人々の期待になぜバイアスがかかるかについては二つの可能性、「株価に関する情報を反映して期待は形成されるが、その反映が不十分である」可能性と、「株価とは無関係な個人の情動を反映して期待が形成されている」可能性が考えられる。アンケート調査で株価予測と同時に尋ねている経済ニュースに関する質問と個人的なニュースに関する質問とを用いてこれらの仮説を検証し、期待は株価に関する情報を反映して形成されるが、その反映が不十分であるために、バイアスが生じることを明らかにした。人々の必ずしも合理的でない行動の原因に情動が提起されてきたが、株価に対する期待形成に限れば情動は影響を与えておらず、人々はある程度は合理的に期待を形成することを示す重要な結果である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
様々な経済状況下で期待データを収集することが目的の一つであるが、計画通り大阪大学及び九州大学にてアンケート調査を実施し、データを収集することができた。また、前年度までの分析結果を2本の論文としてまとめあげることができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
様々な経済状況下での期待データ収集を継続するとともに、それらのデータを用いてこれまでの分析で得られた研究結果の頑健性を確認する。また、なぜ期待にバイアスがかかるかに関する二つの仮説を検証した分析結果を論文としてまとめあげ、しかるべき学術誌に投稿し、掲載を目指す。
|