2010 Fiscal Year Annual Research Report
アジア各国における金融政策や金融システム改革の債券市場と銀行システムへの影響
Project/Area Number |
21730267
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Research Institution | Kyoto Sangyo University |
Principal Investigator |
猪口 真大 京都産業大学, 経営学部, 准教授 (60387991)
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Keywords | 銀行システム / アジア危機 / 国際金融危機 / 金融市場 / 不良債権 / 金融システム改革 / アジア |
Research Abstract |
平成22年度は、世界金融危機のアジア各国の銀行システムに対する影響を分析した。世界金融危機発生以降の時期に焦点を当て、各国銀行部門の株価の大きな変動が、海外の株式市場および銀行部門に生じたショックから影響を受けていることを明らかにした。さらに、アジア諸国における各銀行のバランスシートや株価データから"distance to default"と呼ばれる指標を計算し、各行のデフォルト・リスクの変動を考察した。この結果、世界金融危機時、韓国、マレーシア、シンガポール、タイの各国銀行部門は、ダメージ自体は欧米と比較して小さかったものの、また、1997年のアジア危機以降も銀行システムの改革を進めてきたものの、影響は小さかったとはいえないことが示唆された。本論文は学術雑誌において発表した。また、この論文と関連して、昨年度より進めている、2000年以降におけるアジア各国の銀行部門と対外ショックの関連に関する研究は、平成22年度に学会報告を行うと共に改訂を続けており、今後、改訂版のワーキングペーパーでの発表および海外のコンファレンスでの報告を予定している。 次に、不良債権処理に関する研究も継続しており、タイとマレーシアを対象に、公的機関による債権買取、個別銀行の特性、マクロ経済要因が銀行の不良債権比率や貸出に与えた影響を明らかにした。また、債権買取が行われなかった期間と行われた期間に関しても比較し、検証を行った。分析の結果、タイでは、債権買取に加えてマクロ経済要因が、マレーシアでは各銀行の規模が不良債権比率と関係していることが示唆された。さらに、公的機関による債権買取が無かった期間でも同様の結果が得られ、このことは、もし債権買取が無ければ、タイではマクロ経済要因がマレーシアでは銀行の規模が不良債権の減少に影響を及ぼした可能性を示している。本研究は、平成22年度に学会等で報告しており、来年度中にワーキングペーパー等で公表の予定である。
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