2010 Fiscal Year Annual Research Report
資源産業における垂直統合モデルと水平統合モデルの競争:1960-1979年
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21730272
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
菅原 歩 東北大学, 大学院・経済学研究科, 准教授 (10374886)
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Keywords | 英豪資源企業 / リオティント社 / 米系資源企業 / 水平統合モデル / 垂直統合モデル / オーストラリア / ウラン / 鉄鉱石 |
Research Abstract |
英豪系資源企業のリオティント社をとりあげて、米系資源企業のアナコンダ社、ケネコット社などと比較しつつ、リオ社の競争力の源泉を歴史的に探った。1970年代以降に明らかになった、アナコンダ社やケネコット社に対するリオ社の優位は、第一には、リオ社が1960年代後半にオーストラリアの鉄鉱石と南アフリカの銅を収益の柱とすることに成功したことであった。それに対し、アナコンダ社とケネコット社はチリの銅への依存が続いたにも関わらず、1971年に両社のチリの銅山がチリ政府によって国有化されたことにより、両社とも単独での存続が困難になり、石油企業に買収されることとなった。米系資源企業であってもオーストラリアの鉄鉱石事業に進出したアマックス社などは1990年代まで有力な資源企業であり続けた。1960年代までのリオ社は、資源採掘レベルでの事業拡大を、採掘する資源を、ウラン、鉛・亜鉛、銅、鉄鉱石へと多角化することで実現させた。リオ社は、採掘レベルの事業に重点を置くことで、日本など本国以外の工業の成長から恩恵を得ることができた。他方で、米系資源企業は、銅に関しては自社の精錬部門を拡大させていたため、本国以外の国の成長の恩恵を得ることが難しかった。ただし、1980年代.まではリオ社も自社の加工部門の拡大を追求していた。1980年代までは、加工部門は付加価値が高いと考えられ進出を目指すべき分野と考えられていた。リオ社の採掘部門の拡大では、ウランの場合は英国政府、カナダ政府、豪州政府との関係が有利に働いた。しかし鉄鉱石の場合は、政府との関係が前面に出ることはなかった。リオ社の成長の要因は、はじめから明確に絞られた事業部門の選択というより、採掘部門の拡大と資源に関する多角化、政治的に安全な投資国の追求、加工部門の拡大追求などの多様な事業目標の選択を、英連邦から日本への資源供給という同社の最終的な成長パターンにうまく収斂させることができたことにある。
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