2009 Fiscal Year Annual Research Report
組織内相互作用を通じた技術的知識の生成に関する史的分析-戦前期日本の電機企業
Project/Area Number |
21730282
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Research Institution | Okayama Shoka University |
Principal Investigator |
川合 一央 Okayama Shoka University, 経営学部, 講師 (80330538)
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Keywords | 技術的知識 / 知識創造 / 言語化 / 技術者 / 職位 |
Research Abstract |
本年度は戦前期日本の電気機械工業における組織構成員、特に技術者と呼ばれた人々が、技術的知識を創造する過程に関して実証分析を進めた。また、彼らの出身学校と企業組織内におけるキャリアとの関係性について研究した。その結果得られた知見は次の通りである。第一に、少なくとも明治末期から大正年間に日本の高等教育機関にて技術的知識に関わる教育を受けた人々が習得した知的内容とは、文献に示された、同時代の世界的に見て標準的な技術的知識を外国語であっても理解する能力だった。第二に、そうした人々は、企業組織に所属するようになって以降、人工物の設計あるいは製造の担当者としての職位を与えられ、テキスト化されている既知の知識と、それを人工物ヘ転写のする際に必要となる、言語化されたことのない知識との間に存在するすき間を埋めるために、他社や海外の視察、あるいは同じ組織内の技術担当者と実験を遂行することにより、人工物の稼働に必要な技術的知識を創造していった。そうした取り組みは、例えば労働者の作業のためのテキストとして言語化、すなわちマニュアル化されることもあった。第三に、以上のような技術的知識を創造する能力を有する人々のうち、そのキャリアの大部分を技術的知識創造の担い手としての役割を果たす集団が存在する一方で、比較的早期に職位を上昇させ、技術的知識創造の担い手と言うよりはむしろ、組織の管理者としての役割を担うことになる集団が存在した。
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