2011 Fiscal Year Annual Research Report
組織内相互作用を通じた技術的知識の生成に関する史的分析-戦前期日本の電機企業
Project/Area Number |
21730282
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Research Institution | Okayama Shoka University |
Principal Investigator |
川合 一央 岡山商科大学, 経営学部, 講師 (80330538)
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Keywords | 技術的知識 / 組織内相互作用 / 仕様化 / 技術系職員 / 労働者 / 技 |
Research Abstract |
本年度得られた知見を以下に示す。 (1)戦前期日本の工学系高等教育機関出身者、すなわち技術系職員が、企業組織にて人工物の設計・製造担当者としての職位を与えられた時、彼らは教育機関にて習得した技術的知識・スキルを活用して、人工物を現出させ、それを機能するものとしていった。そうした技術的知識・スキルには、既存の人工物の設計図を見ることなしに、その全体を聞いたり眺めたりすることで、人工物およびそれを構成する諸部品の性能を理解できること、またその理解に基づいて人工物の設計・製造に必要な仕様という数値をともなう情報を工学的原理に基づき創出できることが含まれた。 (2)一般に、設計者は設計情報創造の際、仕様のあり方やそれに基づく人工物に生じうる現象を予め全て知るわけではない。そのため当初、人工物は不具合現象を発生させることになる。これに対して、(1)に示される過程が反復されることで、不具合現象が解消されていくこともあった。それとは別に、初等教育機関・中等教育機関出身で、企業組織において労働者として区分される人々が、工学的思考を伴わず、むしろ経験を通じて自身に体化されたスキルを活用し、人工物を機能するものに変換した事実も確認された。 (3)技術系職員は、設計者情報創造者自身の経験及熟練、労働者により編み出された技法、経験ある労働者の作業を工学にて使用される概念を用いて理解し、原理の解明、製品や装置の数値化、マニュアル作成など、技術的知識として定量化したことが確認された。こうした取組みは、技術系職員のその後の設計情報創造に対してのみならず、労働者の熟練及経験形成を補完した。それは技を盗むという労働者同士の関係が残る時代だったことによる。 (4)(1)(2)(3)を併せて考えれば、技術的知識の生成の点で技術系職員と労働者が互いを利す関係が戦前期の一企業に形成されていたことを日本の経験として指摘できる。
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Research Products
(2 results)