2010 Fiscal Year Annual Research Report
アジアにおける国際金本位制の成立と近代銀市場の担った役割について
Project/Area Number |
21730283
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Research Institution | Matsuyama University |
Principal Investigator |
西村 雄志 松山大学, 経済学部, 准教授 (10412420)
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Keywords | 銀本位制 / 国際金本位制 / ロンドン金融市場 / 小額貨幣 / フンディ / 在来金融 / 金為替本位制 / 銀市場 |
Research Abstract |
本年度は、ロンドン銀市場との関係性を英領インドの事例を通じて検討することに多くの時間を割いた。英領インドの金為替本位制の特徴としては、以前より私自身の研究を通じて指摘している様に、銀流通を拡大させることによってボンドを基軸通貨とする国際金本位制の枠組みの下に英領インドの通貨制度を再編しようとした。しかし、英領インド自体は銀産出量が少なく、その多くをロンドン銀市場に依存していたことから、英領インドの金為替本位制は、金だけでなく銀の側面からも描く必要性を強調した。本科研ではその英領インドに対して銀を供給するために中心的な役割を担った銀商人の活動を検討課題として取り上げたが、結論から先に言えば、一次資料の新たな発掘はできなかった。しかし、以前から読み進めてきた1920年代後半のインド省による大量の銀売却の資料については、今年度大部分のところに目を通すことができた。そのなかでインド省は、1920年代後半段階において銀を主要通貨の地位から外し、政府紙幣の供給量を拡大させることによって、通貨当局としての確固たる地位を確立しようとしていた事がわかる。しかし1920年代中葉の頃では、とくに棉花商人の場合、政府紙幣より銀貨の方を選好していたことが明になっており、銀需要が英領インドに残存していた事は間違いないが、その規模は急激に縮小していた事がわかる。従って、英領インドに関する限り、1920年代の段階で銀は通貨当局の問題関心のプライオリティが低下し、銀自体も通貨と言うよりむしろ商品としての需要の方が強くなっていったと言える。現在、ロンドン銀商人の資料として、1912年のインド省文書も並行して読み進めているが、最終年度は、インド省文書を通じて、第一次世界大戦前から両大戦間期のロンドン銀市場の変容と商人の役割について論じていきたい。そのなかでイングランド銀行で調査したロンドン金市場の資料、ロスチャイルド文書館で見た1912年の貴金属取引の資料も適宜参照しながら、一次資料に基づいた実証分析を試みられればと考えている。
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