Research Abstract |
前年度はおもに貿易統計データなどの数量データを収集・分析したが,今年度はこうした研究をもとに,およそ400件にのぼる文章による商業情報を集積し,分析を進めることにした。第一に,オランダのデン・ハーグにあるオランダ国立公文書館が所蔵するオランダ東インド会社文書に含まれる「日本発信年次報告(missiven van Japan)」を利用し,オランダの取り扱った日本市場向け商品の販売状況等の文書データの集積をはかった。なお,情報の収集に当たっては,オランダの貿易活動だけではなく,いわゆる「唐船」貿易に関する情報の収集にも努めた。第二には,バタヴィアでの商業情報についてである。日本向け商品の産地で情報や日本製製品のアジア各地での販売状況などの情報は,バタヴィアでひとたび集積されたのち,毎年,「一般政務報告(generaal missive)」で本国に伝えられていた。このオランダ東インド会社文書中の「一般政務報告」を利用して,上記に関する商業情報を収集した。 一方,今年度中においては,学会等での口頭報告を6件,実施した。このうち4件は国際学会・会議での英語による口頭報告である。とりわけ,シンガポールで開催されたアジア史研究者国際協会第21回会議(The 21st Conference of the International Association of Historians of Asia)での報告は,自らセッションを組織し,司会もつとめた(セッション「18世紀アジアの砂糖:生産・貿易・消費文化(Asian Sugar in the Eighteenth Century : Production, Trade and Consumption Culture)」)。いずれの報告もおおむね好評を得たと考えている。また,論文等の公表(出版)は5件に達し,そのうち1件は英文による公表である。
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