2009 Fiscal Year Annual Research Report
高機能広汎性発達障害者の特性を活かす組織のデザイン
Project/Area Number |
21730294
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
吉永 崇史 University of Toyama, 学生支援センター, 特命准教授 (40467121)
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Keywords | 発達障害 / 知識経営 |
Research Abstract |
本研究の目的は、高機能広汎性発達障害者(以下、自閉症スペクトラム当事者に限定する)が自らの特性を活かし、知識創造活動に参画しうる経営組織モデルを構築することである。当該年度においては、経営組織モデルの構築に不可欠な、当事者の特性に合わせたコンテクストの可視化と、当事者・非当事者間の効果的なインタラクションを明らかにするためのインタビュー調査を行った。具体的には、富山大学における自閉症スペクトラム学生支援(就職活動支援含む)の実践、自閉症スペクトラム当事者へのインタビュー調査、自閉症スペクトラム当事者支援の先進国である英国(英国自閉症協会就労支援機関や組織的に発達障害学生支援を行っている大学)へのインタビュー調査、自閉症スペクトラム当事者を雇用している企業のマネジャーへのインタビュー調査を行い、テクストデータを収集して予備的な質的分析を行った。 その結果、当事者の特性に合わせたコンテクストの可視化及び当事者・非当事者間の効果的なインタラクションを促進するために、以下の4つの要素を備えた組織をデザインする必要があることが明らかになった。1)全ての組織メンバーが、好奇心に基づく質問を重視した対話によってコンテクストの言語化を目指すナラティプ・アプローチを志向すること、2)神経多様性(Neurodiversity)の理解に基づく当事者への合理的配慮の追求がなされる組織文化を醸成すること、3)部署を横断した組織全体の持つ機能を分解し、組織メンバー1人ひとりの特性に合った業務(目標)を創出する試みが不断に行われていること、4)組織内外を通じて支援者同士のネットワーク(場)を作り、情報共有や振り返りが行われ、当事者へのマネジメントや支援の改善が行われること。これらの要素を抽出できたことで、ナラティブ・アプローチを活用した経営組織モデルの理論的枠組み構築の方向性が明確になった。
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