2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21730318
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
宇田 理 Nihon University, 商学部, 准教授 (80298132)
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Keywords | 戦略転換 / 情報システム / 変化への適応力 / 分散型のシステム |
Research Abstract |
本研究の目的は、戦略変更が、なぜ難しいのかについて、単にその難しさの原因を特定するのみならず、戦略変更が、いかに行われるのかという変更プロセスの丹念な記述を通じて分析することにより、戦略変更を行う経営主体が利用できる診断ツールの開発を目指すものである。 当該年度は、戦略変更のケース収集の一貫として、ヤマト運輸株式会社が、会社の存続を賭けて、大口の商業貨物から後に「宅配便」となる小口の貨物輸送に大きく事業転換する(戦略変更の)プロセスを丹念に追った。とりわけ、輸送事業の綿密な業務運営に欠かせない情報システムとの関連でケースを記述することに注力した。 宅配便という新規事業は、従来の商業貨物とは別のプロジェクトとして始められたが、厳しい経営状況のさなかでのスタートであった。そのため、端緒から業務運営体制を重くせず、完全にマニュアル(手作業)で業務運営が可能なように組み立てられ、情報システムを一切使わずに進められた。しかし、宅配便事業が当初の予想を超えて急成長したため、必要最小限の運営体制では対応できず、すぐさま情報システムの構築を推し進め、運営体制を補完することになった。既存のシステムの使用経験を踏まえ、よりシンプルな情報システムが企図されたが、新規事業の急拡大という課題にも対応できるようにも求められた。そのため、枯れた技術を巧みに組み合わせた「しなやかな情報システム」が構築されたが、この旧くも新しいシステムが、その後の宅配便事業の成長を運用面で支えていく上で大きな役割を果たした。 このケースは、過去のシステム利用経験、トップの意図、想定外の事業環境の変化のなかで、社内の経営資源を次々と組み替えていくなか、柔軟性の担保をどこで取るかという示唆を与えてくれるものである。
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Research Products
(2 results)