2011 Fiscal Year Annual Research Report
近代日本と野村財閥の発展過程の研究――企業家精神と企業倫理――
Project/Area Number |
21730327
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Research Institution | Yamanashi Gakuin University |
Principal Investigator |
野村 千佳子 山梨学院大学, 経営情報学部, 教授 (90298133)
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Keywords | 企業倫理 / 企業の社会的責任 CSR / 経営史 / 証券 / 財閥 / ブラジル |
Research Abstract |
本年度は、野村證券の創業者、野村徳七および野村系企業、野村財閥の社会的責任・社会貢献を研究するとともに、野村徳七と山一證券の創業者、小池国三の比較研究を行った。 野村徳七のルーツと関わる、武士道や大阪商人道の影響を受けた、彼の倫理観、価値基準(仁・義・礼・智・信)が徳七個人のレベルで、また専門経営者や従業員へ理念の浸透を通じて、組織レベルにおいても、その投資活動や事業活動での規範となっていた。この企業倫理・社会的責任的な考え方は、先駆者精神を伴った企業家精神とともに、両輪のごとく野村の発展に寄与した。 一方、小池国三は商人道の影響を強く受け、堅実性、信用第一、顧客本位等の方針をもち、この点においては野村と共通している。両者とも証券業者の社会的地位の向上を志し、その品位・モラルの向上を目指すとともに、公社債の引受け業務への進出等、証券業界の近代化に貢献した。 また、本年度も継続してブラジル野村農場(コーヒー農場、パラナ州、大正15年設立)で働いていた人およびその家族のインタビュー調査を行った。当時ブラジルへの日本人の移民は進んでいたものの、彼らを雇用するような日系企業の進出は進んでいなかった。野村南米農場は日系民間企業のブラジルへの出資第一号であり、現地での劣悪な労働環境や過酷な移民先での生活を強いられた日系移民の救済、といった社会的課題の解決をも大きな目的の一つとした投資であった。農場では日系移民達を積極的に雇用し、その家族を教育・育成し、最新のブラジル式農法を学ばせ、独立に際しては農場が保証人となり支援した。 その他にも徳七は、大阪市立大学の経済研究所への100万円の寄付(昭和2年)をはじめとする教育機関への寄付や、人材育成・学術奨励を目的とする財団、野村奨学部の(大正10年)設立等の社会貢献を行った。後者は、基金の規模、学費全額の給与、被給与者の将来を拘束しない等の特色をもち、時代の要求に先駆するものであった。
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