2011 Fiscal Year Annual Research Report
固有経営パラダイムの転換とアライアンス価値創造とのダイナミズム
Project/Area Number |
21730335
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Research Institution | Shiga University |
Principal Investigator |
陳 韻如 滋賀大学, 経済学部, 准教授 (00389404)
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Keywords | 組織間関係論 / アライアンス / パナソニック / 経営パラダイム / 社会ネットワーク分析 / レッツノート |
Research Abstract |
平成23年度の研究計画は、引き続きパナソニックグループを事例とし、(1)同社の外部資源の学習・内部化メカニズムに関する分析要因の抽出および内部における経営パラダイムの再構築、(2)ネットワーク分析による同グループ内外の連携形態の再確認、(3)研究成果発表の3つを予定していた。研究成果の概要は以下にまとめる。 (1)パナソニックのモバイルパソコン「レッツノート」の技術深化プロセスと技術優位性の源泉について(研究計画(1)と関連する)。陳・魏(2011)では、「レッツノート」の技術深化プロセスに見られる特徴として、技術シーズの分散、提携によるパソコン般計思想の獲得、周辺装置技術の保持・深化、撤退したアナログ技術の転用(e.g.ラジオ事業部等)、グループ調達ネットワークの選択的垂直統合などを明らかにし、「レッツノート」の技術深化をめぐる外部資源の学習・内部化メカニズムを吟味した。「レッツノート」は日本パソコン産業を代表する製品の一つであるため、この研究から日本企業の内部要素技術を十分に利用していなかった可能性、また、従来の垂直統合体制における要素技術の蓄積や開発力の活用の可能性を示したといったインプリケーションがあると考えられる。上記の研究発表以外に、「レッツノート」とその技術の源流の一つであるIBM「ThinkPad」の性能を対比させるデータベースの構築・分析も完了した。「レッツノート」は「ThinkPad」の技術をキャッチアップしていたものの、「レッツノート」は先進的な性能の慎重な採用等の性能の取捨選択的傾向、模索的かつ柔軟な製品投入傾向、パソコン事業部と顧客との接近といった点によって独自の技術優位性を獲得したことも明らかになった。 (2)パナソニックグループの経営パラダイムの転換と業績との関係について(研究計画(2)と関連する)。Park & Chen(2012)においては、パナソニックグループ内外の連携形態とソニーと対比させた結果、それぞれ垂直統合強化と水平分業強化という対照的な戦略を取っていることが明らかになった。構造転換と業績との関連性と併せて検証すると、パナソニックの垂直統合強化路線は2008年まで収益の改善と上昇に貢献したことから、近年日本製造業の不振は垂直統合以外の原因によるものだと推測する。これは本研究の重要な発見の1つである。
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Research Products
(4 results)