2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21730353
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Research Institution | Kansai Gaidai University |
Principal Investigator |
醍醐 昌英 Kansai Gaidai University, 外国語学部, 准教授 (10340746)
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Keywords | 鉄道事業 / 民営化 / 産業組織 / ネットワーク・レール / CTRL / クロスレール / 設備投資 / 交通経済学 |
Research Abstract |
本研究は、民営化が進展する日本と欧州中でも英国の鉄道事業を対象とし、産業組織の再編と設備投資、安全性、そして全国規模の政策立案との関係を考察することにより、各国の市場環境に応じた最適な産業組織のあり方を経済学の観点から分析するものである。 平成21年度は、この内、鉄道事業の民営化における産業組織の再編と設備投資の関係性という観点から研究を行った。まず、英国鉄道(BR)の民営化後に線路運営事業者としてレールトラック社と英仏海峡トンネル連絡鉄道(CTRL)社とが併存した背景について、CTRL社、ネットワーク・レール社、英国交通省、鉄道規制委員会そして英国議会の資料を用いて調査を行った。併せて、建設中のロンドン横断鉄道(クロスレール)計画をも検討した。その結果、リスクが高く多額の公的補助につながる事業に対する財務省の消極的な姿勢などにより、英国国鉄の組織再編とCTRLなど大規模な新設鉄道の整備が別個の枠組で実施されたことが示された。それゆえ、鉄道事業の産業組織の再編形態とレールトラック社に大規模な設備投資を求めない政策との間に密接な関係があることが確認された。 また、他の欧州の鉄道事業の民営化当初および事後の産業組織の再構築状況について調査した。例えば、ドイツの事例の検討からは、EU諸国において競争促進を目的に上下分離が導入されたが、各国の拡張された線路容量を利用する形でドイツ鉄道の貨物事業が汎欧州的に拡大し、鉄道貨物事業の寡占化が進行したことなどが得られた。 このように、欧州の議会資料や研究業績などに基づいて、鉄道事業の産業組織が再編される際の政策決定過程を調査し、組織再編の設備投資に対する影響を検討した結果、設備投資の喫緊性に応じた産業組織の修正が重要であることが明らかとなった。これらの考察内容を踏まえ、次年度は産業組織の再編と安全性の関係性という観点から引き続き研究を行う予定である。
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