2010 Fiscal Year Annual Research Report
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21730353
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Research Institution | Kansai Gaidai University |
Principal Investigator |
醍醐 昌英 関西外国語大学, 外国語学部, 准教授 (10340746)
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Keywords | 鉄道事業 / 民営化 / 産業組織 / 安全性 / 英国鉄道 / 鉄道規制局 / ネットワークレール / 交通経済学 |
Research Abstract |
本研究は、民営化が進展する日本と欧州中でも英国の鉄道事業を対象とし、産業組織の再編と設備投資、安全性、そして全国規模の政策立案との関係を考察することにより、各国の市場環境に応じた最適な産業組織のあり方を経済学の観点から分析するものである。 平成22年度は、この内、鉄道事業の民営化における産業組織の再編と安全性の関係性という観点から研究を行った。まず、英国鉄道(BR)の民営化後にロンドン郊外において列車事故が断続的に発生した背景について、英国交通省、鉄道規制局(ORR)、ネットワークレール社、英国議会、および線路保守事業の資料を用いて調査を行った。その結果、事業分割とそれに伴う組織間の取引費用の増大が安全性の担保を不充分にしたことが示されたが、自由化すなわち規制緩和が安全性を低下させたか否かについては有意な結論は得られなかった。それゆえ、鉄道事業の産業組織の再編形態と安全性との関係について内外の事例を含めた一層の分析が必要となる。 また、昨年度に引き続き、欧州の鉄道事業の民営化後の産業組織の再構築状況について調査した。例えば、ドイツにおいて東西ドイツの両国有鉄道事業の統合および分割民営化以降の事例を調査する中で、東西ベルリンの空港事業の統合事例が鉄道事業の産業組織の修正においても参考となることが判明したことから併せて調査した。その結果、域内交通需要の多寡、安全性への評価、そして地域自治体の政策が事業統合に影響を及ぼすことなどが得られた。 このように、欧州の議会資料や研究業績などに基づいて、鉄道事業等の産業組織が再編される際の政策決定過程を調査し、安全性に対する影響を検討した結果、安全性の評価に対応した産業組織の修正が課題となることが明らかとなった。これらの考察内容を踏まえ、次年度は主に産業組織の再編と全国規模の政策立案との関係性という観点から引き続き研究を行う予定である。
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