2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21730356
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
久保 淳司 北海道大学, 大学院・経済学研究科, 准教授 (70322790)
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Keywords | 蓋然性要件 / 不確実性事象 / 債務性要件 / 将来事象 / 偶発事象 / リスク / 危険 |
Research Abstract |
本年度は,研究期間の最終年度に当たり,「リスク負債のオンバランス化の研究」のまとめを行った。主な成果として以下の2つが挙げられる。 第一に,アメリカの現行会計基準の分析を通じて,「リスク負債」のオンバランス化にあたっては,将来の支出に関して不確実性のある事象を「リスク」と「危険」とに峻別する必要性を明らかにした。従前,リスクに関する会計処理方法にはSFAS5型とSFAS143型があるとされていたが,使い分けの規準は必ずしも明らかではなかった。これに対して,前者を「危険」を対象にする会計処理方法,後者を「リスク」を対象にする会計処理方法と捉えることによって使い分けの局面を明らかにするとともに,さらに,偶発損失や毀損資産の会計処理とも整合する「リスク負債のオンバランス化」が可能になることを明らかにした。 第二に,「リスク」に対しては不確定支出を認識可能にするような{債務性要件+期待値測定}を,「危険」に対しては偶発支出を認識可能にするような{債務性要件+見積支出額}を,現行会計基準(不良債権,偶発損失,税務不確実性,ER負債,ARO負債,EDCO負債,債務保証)では一貫して適用されていることを明らかにした。これらの会計処理を適用することで,「リスク」は負債の早期認識,「危険」は損失の早期認識という保守主義の発現に結び付いており,これらの背景を犠牲の生起,過去事象の生起,負債の本質,蓋然性の閾値,測定属性などを一事象観最終的犠牲説と一事象観派生犠牲説という2つの見解に基づいて概念整理を行った。
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