2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21730360
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
緒方 勇 山形大学, 人文学部, 准教授 (40435300)
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Keywords | R&D / 利益調整 |
Research Abstract |
平成22年度は、二つ目の研究課題である、経営者が利益調整目的で無形資産投資を削減することで、当初の予定よりも不十分な量しか無形資産投資が行われていないかどうかの検証を行った。具体的には、経営者は半期目標利益を達成していない場合には、後期の会計期間において(当初の予定よりも)R&Dを削減する、という仮説を検証した。分析結果は、この仮説を支持するものであった。また,R&D費用の削減を通じた利益調整が,すべての企業において広範に行われるのではなく,売上高に占めるR&D予算の割合が大きい場合において見られることも発見した。また、半期目標利益が未達成にもかかわらず、通期決算では通期目標利益を達成している企業では、このような利益調整活動がより顕著に確認された。これらの発見は,R&D費用の「期中における」削減を通じた利益調整の存在を示す証拠となる。 また、追加の研究として、経営者は利益調整の際に、どのような方法を組み合わせているのかについても検証した。利益調整の方法には、R&D削減以外にも、減価償却費の削減、売上高の増加、アクルーアルによる方法等、いくつかの方法があり、経営者はこれらの方法を組み合わせて利益を調整しているものと思われる。分析の結果は、利益を調整する際には、R&Dを削減する場合には減価償却費も併せて削減していることが判明した。この結果は、経営者は利益調整を行う際、(経営の実質的な変更を伴わない)会計的な利益調整よりも、経営の実質的な変更を伴う利益調整を優先的に行うことを示唆している。 これらの結果は、企業経営が当初の予定より芳しくない時、経営者はR&D削減に走りやすいことを示唆している。これらの結果をまとめた論文を現在投稿中である。
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