2010 Fiscal Year Annual Research Report
経営者報酬における会計情報の役割:非効率的市場と利益マネジメントを前提にして
Project/Area Number |
21730367
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
椎葉 淳 大阪大学, 大学院・経済学研究科, 准教授 (60330164)
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Keywords | 経営者報酬 / 非効率的市場 / 利益マネジメント / 比較制度分析 / 完備契約 / 不完備契約 / 報酬契約の開示 / 動学モデル |
Research Abstract |
本研究の目的は、非効率的市場と利益マネジメントの存在を前提にして、経営者報酬における会計情報の役割を検討することにある。本研究は3年間をかけて進める予定であるが、2年目である本年度においてはまず、日本管理会計学会2010年度全国大会の統一論題において、「比較会計制度分析:コントロール機能の一つの分析視角」と題する報告を行なった。同名の論文は『管理会計学』第19巻第2号にも掲載予定である。この論文では、現実の経営者報酬契約を考察した上で、実際に用いられている契約が「会計数値に基づいた単純な契約」であることを明らかにした。また、このように現実の契約が完備契約の基本モデルが想定するほど柔軟なものではないということは、報酬契約以外の他の制度によっても経営者にインセンティブが与えられている可能性を示唆しており、このことから会計を比較制度分析と呼ばれる視点から研究することの重要性を指摘した。このような視点は、非効率的市場と利益マネジメントの存在を前提にして経営者報酬契約を考えるという本研究目的の理論的基礎を与える重要な成果である。 また、ヨーロッパ会計学会において、"Earnings Management in Dynamic Settings"(村上裕太郎との共著)と題する論文を報告した。この論文は、前年度から継続して研究しているもので、経営者の利益マネジメント行動を分析する新しい動学モデルを提示したものである。さらに、アジア太平洋管理会計学会において"The Effect of Compensation Contract Disclosure on Executive Behavior"(呉重和との共著)と題する論文を報告した。この論文は、報酬契約を開示することによって、経営者行動がどのように影響を受けるかを考察したものである。
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Research Products
(4 results)