2011 Fiscal Year Annual Research Report
経営者報酬における会計情報の役割:非効率的市場と利益マネジメントを前提にして
Project/Area Number |
21730367
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
椎葉 淳 大阪大学, 大学院・経済学研究科, 准教授 (60330164)
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Keywords | 経営者報酬 / 非効率的市場 / 利益マネジメント / 比較制度分析 / 完備契約 / 不完備契約 / 報酬契約の開示 / 動学モデル |
Research Abstract |
本研究の目的は、非効率的市場と利益マネジメントの存在を前提にして、経営者報酬における会計情報の役割を検討することにある。本研究は3年間をかけて進めてきたが、3年目である2011年度は、これまで検討が十分でなかった非効率的市場といった市場の特徴が経営者報酬に与える影響に焦点を当てて研究を行った。ただし、研究を進めていくなかで、市場の非効率性よりもむしろ、同一の情報であっても投資家によって解釈が異なるという、投資家間の意見不一致(difference of opinion)に関する問題の重要性に気づき、この視点から先行研究の検討を行った。ここで投資家間の意見不一致とは、たとえば棚卸資産の増加という情報のように、受注が増えたことにより生産量が増加したことなどを意味するグッド・ニュースなのか、製品の売れ残りが増えたことなどを示唆するバッド・ニュースなのかが、各投資家の解釈によって異なることである。このような投資家間の意見不一致に関する研究内容とその含意について検討を行いまとめたのが、2011年に『産業経理』に公表した「会計情報に対する投資家間の意見不一致が及ぼす影響について」(石椛義和氏との共著)である。この他、複数の企業が存在する資本市場における会計情報の役割を検討した"The Role of Related Firm Information in a Financial Statement Analysis"(山口貴史との共著)と題する論文をアジア会計学会において報告した。そして、論文の報告・公表までには至っていないが、以上のような資本市場の特徴が経営者報酬にどのような影響を与えるかについて検討を行い、経営者報酬研究において資本市場の特徴を明示的に取り入れた考察の重要性について明らかにした。
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Research Products
(2 results)