2009 Fiscal Year Annual Research Report
会計利益の品質と資本コストおよび負債コストとの実証的関連性
Project/Area Number |
21730370
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
北川 教央 Kobe University, 大学院・経営学研究科, 准教授 (80509844)
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Keywords | 利益の質 / 負債コスト / 会計発生高の質 / 利益の持続性 / 利益の予測可能性 / 利益平準化 |
Research Abstract |
本研究課題は、会計利益の品質と株主資本コストおよび負債コストとの関係について明らかにすることである。研究実施計画に従い、本年度は文献渉猟と実証分析に主眼を置いた。とくに分析では、利益の品質と負債コストの関連性について興味深い結果が得られた。利益の品質が低いとき、社債投資家は投資対象銘柄のリスクとリターンを評価する際に不確実性に直面することになるので、その代償として追加的なリスク・プレミアムを要求すると予想される。そこで本研究では、利益の品質(後述:4つの利益特性で測定する)が低いほど負債コスト(普通社債の利率スプレッド)は高くなるという仮説を立て分析を行った。分析の結果は仮説を支持するものであり、高品質の利益を報告している企業は、社債発行時の利率負担を低く抑えられることが示された。 利益の品質と負債コストの関係については先行研究でも分析が行われている。しかし、先行研究の多くは会計発生高の側面のみから利益の品質を測定している。これに対し本研究では、利益の品質が抽象的な概念であることを考慮し、先行研究で利用されてきた利益の品質に関する複数の測定尺度(会計発生高の品質、利益の持続性、利益の予測可能性、および利益平準化)を用いた。この点が1つの特徴である。また、わが国の社債市場における利益の品質と負債コストの関係については解明されておらず、これに関する証拠を提示したことも特徴である。 なお本研究では、利益平準化が負債コストを低減させるか否かについて、頑健な証拠を得ることができなかった。先行研究では、利益平準化が利益の品質を高めるか否か自体が議論になっている場合もある。したがって、利益平準化については概念整理も含め、さらに検討を加える必要がある。
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