2011 Fiscal Year Annual Research Report
会計利益の品質と資本コストおよび負債コストとの実証的関連性
Project/Area Number |
21730370
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
北川 教央 神戸大学, 大学院・経営学研究科, 准教授 (80509844)
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Keywords | 利益の品質 / 会計発生高の品質 / 利益平準化 / 利益の予測可能性 / 個別リスク / 経営者持株比率 / 負債コスト |
Research Abstract |
奥田・北川(2011)では、会計利益の品質と個別リスク(idiosyncratic risk)との関連性について分析を行った。個別リスクは、投資家が分散投資によっても分散することのできない企業固有のリスクであり、資本コストと密接に関連した概念である。本研究では、利益の品質を「投資家が将来業績を予測する際の不確実性の程度」と定義し、「高品質の利益を報告する企業ほど、将来業績予想に際しての不確実性は低いため、個別リスクは小さい」と仮説を立て、分析を行った。利益の質の尺度としては、会計発生高の品質(accrual quality)、利益平準化(smoothness)、利益の予測可能性(predictability)に関する複数の測定尺度を用いた。 分析の結果、利益の品質と個別リスクとは統計的に有意な負の関連性を有することが確認され、仮設と首尾一貫した結果が得られた。また、利益の品質と個別リスクとの関係は、近年になるほど強くなることが明らかとなった。これは、近年に行われた一連の会計制度改革によって、高品質の利益の報告することが企業にとってよりメリットをもたらすようになったことを示唆している。本研究は、昨今の会計制度改革の意義を、リスク評価の観点から明らかにした点で意義を有すると思われる。 また、Shuto and Kitagawa (2011)では、他の要因をコントロールしてもなお、経営者持株比率が負債コストと有意な正の関連性を有することを明らかにした。この結果は、経営者による株式保有が負債のエイジェンシーコスト上昇のシグナルとなることを示唆しており、負債コストとの関連性を分析するに際しては、経営者持株比率の考慮が肝要であることも指摘できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでの研究(北川,2009;Kitagawa and Gotoh, 2010;奥田・北川,2011)において、会計利益の品質と株主資本コストおよび負債コストとの間には、統計的に有意な関連性があることが示された。また、その関係は時系列的に変化してきていることが明らかとなった。これらは、わが国の先行研究では実証的証拠の蓄積が少なかった領域であり、大局的な目的は達成できていると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究により、会計利益の品質と株主資本コスト(または個別リスク)は負の関係を有しており、その関係は時系列的に強まっていることが明らかとなった。今後は、両者の関係が変化していることの背後にある要因を明らかにしたい。たとえば、新会計基準の設定や経済環境の変化に伴い、特別損益の計上額または計上頻度が拡大していることなどが、要因の1つとして考えられるかもしれない。
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Research Products
(2 results)