2010 Fiscal Year Annual Research Report
企業の税務活動が財務報告に与える影響に関する実証研究
Project/Area Number |
21730371
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
米谷 健司 東北大学, 大学院・経済学研究科, 准教授 (90432731)
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Keywords | 財務会計 / 税務会計 |
Research Abstract |
本研究の目的は、企業の税務活動が財務報告にどのような影響を与えるのかを実証的に解明することである。本研究の研究期間は2年間であり、本年度は最終年度にあたる。1年目で収集したデータをもとに、分析結果を2つの論文にまとめた。特に、企業の税務活動をあらわす指標として、(1)試験研究費に係る税額控除と、(2)損益計算書上の実効税率に着目した。まず(1)については、2003年度の研究開発税制の改正を分岐点として、研究開発減税が企業の研究開発行動にどのような影響を及ぼすか、またどのような企業により影響を与えたのかを明らかにすることを問題意識とした。その結果、研究開発投資を積極的に行った企業は減税という便益を事後的に享受しているものの、必ずしも減税という便益に魅力を感じ、事前的に研究開発計画を変更し、投資を行うわけではないということが明らかとなった。これについては『産業経理』に「実効税率の変化と利益の持続性及び株式リターンの関係」という題目でまとめた。また(2)については、前期の実効税率と当期の実効税率の差によって生じる利益は翌期の利益に対してある程度持続的であり、実効税率の変化は一時的な要因だけではなく、持続的な要因も反映しており、また株式市場はそうした持続性を合理的に価格に反映しているということが明らかとなった。ただし、法定実効税率からの乖離および産業別の実効税率の水準からの乖離も将来の利益に対してある程度持続的であるが、そのような持続性を市場は合理的に価格に反映していない可能性があることが明らかとなった。この結果から投資家は実効税率の平均回帰を想定し、税負担の平均的な水準に対してバイアスのある認識をしており、個別企業ごとの実効税率抑制努力を軽視している可能性があると考えられる。これらについては『會計』に「税額控除が研究開発投資に与える影響」という題目で掲載した。
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Research Products
(2 results)