Research Abstract |
本年度は,前年度に引き続き,先行研究の収集と文献サーベイを行いつつ,前年度に行った公立病院での調査内容を解析し,理論的考察を試みた。一連の成果については,国際学会「Academy of Management Annual Meeting (2010.8.8,モントリオール)」において,「Passion and Compassion and Social Power: Rethinking Japanese-Style Management」という統一テーマのもと発表を果たした。そこでは,(1)医療機関を対象とした管理会計研究のレビューおよび先行研究からの知見・限界の提示,(2)病院改革のケースにおける問題化アプローチ(Problematization Approach)および脱問題化アプローチ(De-Problematization Approach)の発見,そして,(3)脱問題化アプローチの組織改革における有効性,を中心に成果報告をした。これまでの「組織改革」では,まず組織成員を問題化することから始まり,顕在化された問題を解決すべく,外部から導入された管理会計などの管理手法の型に彼らをはめ込もうとするのが主流であった。しかし,このようなアプローチでは,特に病院組織では,経営者側とコンフリクトを起こしてしまう。本報告では,問題化アプローチではなく,トップ(院長)の明確な戦略コンセプト(組織の強みを引き出し,かつ収益性につながるビジネスモデル)のもと,現場に十分にエンパワメントし医師を動機付け,管理手法も医師,看護師,その他スタッフと一体となって組織独自での開発を促すといった脱問題化アプローチが,病院組織の改革成功のひとつの方向性と考えている。このような成果を,本研究では,次年度以降の予定している定量研究の分析枠組みを構築する上で重要な視点としている。
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