Research Abstract |
本年度は,これまで実施してきた,自治体立病院の経営改革の事例研究の追加的な調査と,事例研究の理論的な位置づけを明確にするための,網羅的な文献サーベイ,そして,文献研究と事例研究の結果を踏まえた上での,マネジメント・コントロール研究の理論的分析枠組みの開発である.具体的には以下のとおりである. まず,本研究では,自治対立病院の大規模な経営改革の事例に着目しながら,病院組織のガバナンスの変化(県知事から企業長による統括,企業団の設立),構造的変革(施設の民間委譲,職員数の削減,給与改革),マネジメント文化の形成,病院機能特化,様々な管理ツールの導入(公営企業予算,報酬連動型業績評価,など)など,マネジメント・コントロールの観点から観察してきた. 病院におけるマネジメント・コントロールの形成が,既存のマネジメント・コントロール研究にどのような意義があるのか位置づける必要性があるため,プロフェッショナル組織,とくに,病院を対象としたマネジメント・コントロール研究の現状と課題を網羅的な文献レビューから抽出することにした. さらに,病院では,管理者と医療スタッフとの間で生じるコンフリクトが古くから問題視されてきた.従来のマネジメント・コントロール研究では,そのようなテンションを解消・回避することが重要視されてきた.しかしながら近年の研究では,組織の中で生じるそのようなテンションを安易に解消・回避するのではなく,両者の意思決定・行動をいかにマネジメントして組織成果に結びつけるかに関心が寄せられている.本研究では,文献サーベイと自治体立病院や民間企業の事例も考慮しながら,特定の組織に限定することのない,テンション・マネジメントのための理論的な分析枠組みの開発を行った.
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