2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21730381
|
Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
松原 沙織 Tokai University, 政治経済学部, 講師 (10514961)
|
Keywords | 包括利益 / 純利益 / ベーシス・アジャストメント / ノー・ベーシス・アジャストメント / 繰延ヘッジ損益 |
Research Abstract |
本年度はまず,繰延ヘッジ損益の処理方法について検討を行った.例えば,繰延ヘッジ損益の処理方法に関して純利益計算を念頭に置いている日本では,ベーシス・アジャストメントが用いられているのに対し,包括利益計算を念頭に置いている米国では,ノー・ベーシス・アジャストメントが用いられている.これらの処理方法の背景には,利益計算に対する思考の相違が存在すると考えられる.そこで本研究では,予定取引について繰延ヘッジを適用した場合のベーシス・アジャストメントおよびノー・ベーシス・アジャストメントを前提に,それぞれの処理方法がいかなる利益計算に関連付けて説明されうるのか,これらの結びつきを明らかにした. 検討の結果,包括利益計算は,ヘッジによる損益への影響を反映しない計算体系であることが導かれた,かかる包括利益計算を踏まえるならば,ベーシス・アジャストメントは,ヘッジ会計を無視したことにならないがゆえに,包括利益計算の立場より否定されることが確認された.一方,支払対価に基づく取得原価評価を基軸とした投下資本の回収余剰計算が,純利益計算を念頭に置いた考え方として理解されてきた点を踏まえるならば,同様の評価がなされるベーシス・アジャストメントは,純利益計算のみを念頭においた処理方法として位置づけられた.一方,単純に上述の包括利益計算との整合性のみに焦点を当てるのであるならば,必ずしもノー・ベーシス・アジャストメントが適用される必要はない.それにも関わらず,ノー・ベーシス・アジャストメントが肯定されるのは,純利益計算が重視されていることに起因する.このことはまた,米国において稼得利益が重視されている証左といえる.よって,ノー・ベーシス・アジャストメントが,包括利益計算の枠組みにおいて純利益計算を念頭においた処理方法であることが明らかにされた.
|
Research Products
(1 results)