2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21730381
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
松原 沙織 東海大学, 政治経済学部, 講師 (10514961)
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Keywords | 包括利益 / 純利益 / 繰延ヘッジ損益 / 予定取引 / 新株予約権 |
Research Abstract |
制度上包括利益は,特定項目を時価評価することにより算定されるが,なぜ限定された項目のみが包括利益計算へ含められるのか課題として残されている.そこで本研究は,特定項目がいかなる事実を踏まえ時価評価され,その変動額が包括利益計算へ含められるのか,包括利益計上の意味を検討することを目的としている,具体的には,包括利益概念に関する認識面および帰属面からの検討を踏まえ,包括利益へ影響を与える特定項目を分析している. 第1に,予定取引に対し繰延ヘッジを適用しその結果生ずる繰延ヘッジ損益について,繰延ヘッジ損益の処理方法であるベーシス・アジャストメントおよびノー・ベーシス・アジャストメントを前提に,当該処理方法がいかなる利益計算に関連付けて説明されうるのか明らかにした.検討の結果,包括利益計算はヘッジによる損益への影響を反映しない計算体系であることが導かれた.それにも関わらずノー・ベーシス・アジャストメントが肯定されるのは,純利益計算が重視されていることに起因する,よって,ノー・ベーシス・アジャストメントが包括利益計算の枠組みにおいて純利益計算を念頭に置いた処理方法である点が確認された. 第2に,新株予約権について米国および日本において異なる取扱いの背景にある思考を導き,連結財務諸表を前提に子会社の新株予約権を失効時に利益へ振り替える処理方法が,利益計算へ与える意味を明らかにした.検討の結果,新株予約権を失効時に利益へ振り替える処理方法は,新株予約権戻入益が実現した収益である点を踏まえるならば,親会社説型純利益と経済的単一体説型包括利益との差を認識面より説明することが困難であるという意味をもたらすことが導かれた.このことは,米国および日本において概念上同一の経済的単一体説型包括利益を計算表示したとしても,新株予約権をいかなる経済事象として捉まえるかにより包括利益の意味が異なる証左と言えよう.
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Research Products
(3 results)