2010 Fiscal Year Annual Research Report
新製品開発戦略の「戦略化」プロセスにおける管理会計の役割に関する実践論的研究
Project/Area Number |
21730386
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
堀井 悟志 立命館大学, 経営学部, 准教授 (50387867)
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Keywords | 予算管理 / 会計のリズム / 戦略的適応 / 新製品開発戦略 / 管理会計リテラシー / 実践論的研究 / 機能主義的研究 / 方法論的統合 |
Research Abstract |
前年度に発見した経験的事実を基礎とし,株式会社バッファローにおける追加的な聞取調査を行うとともに既存研究との関連で整理・検討を行った。その結果,集約的財務指標,新製品開発の短期化のもとで予算管理プロセスを議論の場として用いることで,会計と行動計画のリズムの調和の乱れをきっかけに戦略的適応,製品イノベーションが可能になっているだけでなく,予算管理プロセスが新製品開発の基礎である人的資本の構築の場を提供し,組織能力を向上させていることが明らかになった。そのうえで,予算管理の運用においては管理会計リテラシー(予算管理などの管理会計の位置づけ・役割への理解等,管理会計を取り扱う能力)が重要であることを指摘した。また,別の企業での調査からも,責任会計を基礎とする会計目標によって事業ドメイン,新製品開発戦略が決定されていることも明らかになり,このように新製品開発戦略の戦略化プロセスでは管理会計が極めて大きな役割を果たしているといえる。これらの発見および指摘は,予算管理が日常の業務において影響をもつ現場に着目する実践論的研究方法論によって可能になったことである。 また,実践論的研究と機能主義的研究の方法論的統合を試みるために,研究パラダイム等について文献研究を行った。研究者に対する業績評価制度が,パラダイム選択に影響を与え,1つのパラダイムに固執する状況を作り出し,さらにはトップ学術誌がパラダイムに備えられた科学性を求めるがために理論と実務がますます乖離していくこと,逆に決まったパラダイムの存在は,個々の研究者にとっては研究の効率性に影響を与えているが,学術的知識全体にとって,本当に意味ある知識なのかは定かでなく,パラダイムの分裂は社会にとって必ずしもいい影響を与えているとはいえず,より良い知識体系を構築するためにはパラダイム間対話を行うことが重要であると考えられていることを明らかにした。
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Research Products
(3 results)