2010 Fiscal Year Annual Research Report
島嶼地域からの疎開離散者に関する社会学的研究:小笠原・硫黄諸島を中心に
Project/Area Number |
21730400
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Research Institution | Meiji Gakuin University |
Principal Investigator |
石原 俊 明治学院大学, 社会学部, 准教授 (00419251)
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Keywords | 社会学 / 歴史社会学 / 小笠原 / 硫黄島 / 疎開 / ディアスポラ / 島嶼 |
Research Abstract |
本研究の目的は、日本軍によってアジア太平洋戦争の前線に置かれ強制疎開や軍務動員の対象となり、戦後も長らく故郷喪失と離散(ディアスポラ化)を強いられた小笠原諸島や硫黄諸島の人びとが、いかなる経験をくぐり抜けてきたのかを、歴史社会学的な手法により明らかにすることにある。 本年度は、日本の敗戦後、小笠原・硫黄諸島に対する米軍の占領が既成事実化する1940年代後半から小笠原諸島の施政権返還が実施される1968年にかけて、戦後東アジア・西太平洋の構造的矛盾を背負わされ帰島を許されなかった両諸島の疎開離散者たちが、個人や世帯レヴェルで、各地で自分たちが置かれた状況に対応しつつ、どのように生き抜いていったのかを考究した。とりわけ、戦時中に東京都内や埼玉県内に「共同疎開」していた人びとや、各地の親戚宅や知人宅に身を寄せていた疎開者たちが、その後どこでどのような生活状況をたどったのかを検討した。 また昨年度末から本年度初頭にかけて、米軍普天間飛行場の硫黄島への移転が検討にのぼるなど、小笠原・硫黄諸島は図らずも大文字の政治の波にのまれることになった。しかしながらマスメディアにおいては、「沖縄」がクローズアップされるいっぽうで、移転候補地のひとつである硫黄諸島とその住民が強いられてきた歴史的経験はほぼ一貫して閑却され続けた。こうした状況に対して、小笠原・硫黄諸島からの離散者(ディアスポラ)の存在を日本/東アジアの近代認識のなかに正当に位置づけることの必要性を説いた、一般向けの論考をも執筆した(下記「図書」欄記載の『殺すこと/殺されることへの感度-二〇〇九年からみる日本社会のゆくえ』所収)。
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