2010 Fiscal Year Annual Research Report
社会階層構造を規定する教育・雇用・社会保障制度の東アジア比較
Project/Area Number |
21730401
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
有田 伸 東京大学, 社会科学研究所, 准教授 (30345061)
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Keywords | 社会学 / 社会階層 / 東アジア / 韓国 / 台湾 / 教育制度 / 労働市場 / 社会保障 |
Research Abstract |
中間年度となる本年度には、韓国にて行った文献調査・ヒアリング調査、先行研究成果の批判的検討、さらには国内外の韓国・台湾研究者と積極的に行ったディスカッションなどを通じ、ひとびとの間に報酬格差をもたらす可能性のある教育・雇用・社会保障制度の比較分析に当たった。その中でも特に「非正規雇用問題」を生み出す主因である雇用制度に重点を置き、その性格が日本・韓国・台湾の間でどのように異なるのかを、それぞれの労働市場の特徴を視野に入れながら考察した。 これらの考察結果をふまえつつ、2005年SSM調査データや人口センサスデータの計量分析を通じ、それぞれの教育・雇用・社会保障制度の特徴が社会階層構造に及ぼしている影響を分析した。ここでは特に「日本型雇用慣行」に代表される生活保障型報酬制度の受益者選別性が、東アジアの社会において大きな報酬格差をもたらしている可能性に着目しつつ、それぞれの社会の不平等構造の分析を行った。 以上の考察結果を、国内外、特に米国において行われた研究会等にて積極的に報告し、他の研究者からのフィードバックを得た。この結果、制度的条件が報酬不平等をもたらすメカニズムについてより精緻な理論的枠組の構築が必要であることが明らかになり、米国において盛んに研究が進められてきた経済社会学の成果を参照しつつ、その構築にあたった。これまで東アジアの報酬格差を理解するための視座は経済学的視点から築かれることが多かったが、東アジアの報酬不平等には制度的条件も強く作用しているため、それらの独自性を十分に考慮しうる社会学的視点に立った理解が特に求められる。本年度の以上の成果は、このような東アジアの報酬不平等を理解するための社会学的視座の構築に対して、大きな意義を持つものと考えられる。
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Research Products
(4 results)