2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21730409
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
竹ノ下 弘久 静岡大学, 人文学部, 准教授 (10402231)
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Keywords | 国際移民 / 間接雇用 / 雇用の流動化 / トランスナショナリズム / 社会関係資本 / 移民の子どもたち / 親子関係 / グローバル化 |
Research Abstract |
本年度は、研究の最終年度であり、量的調査データを中心とした研究成果の取りまとめを行った。本研究の目的は、国際移民の社会経済的地位上昇の可能性を日系ブラジル人を事例に明らかにすることにある。日系ブラジル人の社会経済的地位上昇について、成人の第一世代の移民は、従業上の地位と所得に、第二世代にあたる移民の子どもたちは、教育達成に焦点を当て考察した。日系ブラジル人は、その多くが非正規雇用(主として派遣・請負の間接雇用)のセクターに包摂されているが、フルタイムの直接雇用への移動を果たした人たちも1割程度存在する。分析の結果、1990年代後半以降のさらなる雇用の流動化の進展により、近年になるほど、ブラジル人の直接雇用への移動が困難なものとなり、そうした状況に対して、人的資本はきわめて限定的な役割しか果たしていなかった。社会関係資本の効果では、対象者の多くは現在の仕事を得るために、ブラジル人の友人や親族といったエスニック・ネットワークを利用していたが、間接雇用からフルタイムの直接雇用への移動では、日本人とのネットワークの利用が有効であった。年収を従属変数とする分析では、人的資本の効果は限定的であるものの、その多くが時給制の非熟練労働に従事するブラジル人は、労働時間の説明力がきわめて高かった。社会関係資本については、エスニック・ネットワークの活用が労働時間の長い仕事を見つけるのに効果的であり、エスニック・ネットワークは、年収に対して労働時間を介した間接効果を有することも明らかとなった。子どもたちの教育達成については、様々な家族的背景としての親の学歴、職業、親の日本語能力が子どもの高校進学を左右していた。とりわけ、親の雇用が安定していることは、子どもの高校進学を高める効果があった。日本とブラジルの頻繁な行き来といった、トランスナショナルな実践は、子どもの高校進学を低める効果を有していた。以上の分析結果は、日本における国際移民の統合政策を考察するうえで、重要な示唆を提供するものである。
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Research Products
(6 results)