2010 Fiscal Year Annual Research Report
フランス旧植民地「アフリカ系」女性移住者の社会編入―越境する女性の地位向上戦略
Project/Area Number |
21730414
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Research Institution | Kagawa University |
Principal Investigator |
園部 裕子 香川大学, 経済学部, 准教授 (20452667)
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Keywords | 社会学 / 国際移動 / ヨーロッパ連合:フランス:アフリカ:マリ:セネガル / ジェンダー / 難民 / エスニシティ / 統合 / 共生 |
Research Abstract |
「アフリカ系」女性移住者による滞在資格取得と行為者としての社会編入過程を分析し、女性移住者の地位向上戦略を明らかにするため、文献調査及び1ヶ月の現地調査を行った。調査は前年度に引き続き、パリ市内の「アフリカ系」女性移住者による社会・文化的仲介を行う市民団体において聞き取り、参与観察を行った。調査先団体の仲介者は、地区の学校など行政と連携し、そこで移民第一世代向けの通訳や情報伝達の役割を果たしている。この活動は、親世代を子の教育や地域生活に呼び込み、地域コミュニティと移民の意思疎通を円滑にする。フランスでは「親のあり方(parentalite)」をめぐる議論が盛んで、移民出身仲介者が特に移民の多い地区で果たしているこのコミュニケーション機能が、受入社会と移民の間の双方向的な「統合」の鍵となっている。 また、サブサハラ・アフリカにおける「女性性器切除(FGM)」の実践は、女性の生活の質や地位向上を妨げる重要な課題のひとつである。受入社会と移民コミュニティにおいてしばしば提起されてきたこの問題に対処するため、調査先団体はフランスの人道援助NGOと連携して送出社会における啓発運動を始めた。この連携には、受入社会で経済的・社会的に困難な地区に居住する移住者が、受入社会の人権思想に基づく越境的な人道援助活動への参入を、受入社会における権利と地位向上の資本に転換する構図が見られる。移住者はこの連携を受入社会における社会的資本の構築のために戦略的に利用し、出身社会のNGOともネットワークを形成するとともに、世界社会フォーラムへの参加等を通じて自らのエンパワーメントに繋げていることが分かった。以上の2つの活動から、調査先団体が女性の受入社会における移住者としての社会編入条件と送出国での資本獲得において果たす役割を、フランスの移民をめぐる法改正の動きから分析することが今後の課題となる。
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