2010 Fiscal Year Annual Research Report
フランス都市暴動の社会学的研究-集合的行為論と社会的排除論の観点から
Project/Area Number |
21730418
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
松浦 雄介 熊本大学, 文学部, 准教授 (10363516)
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Keywords | 都市暴動 / コンフリクト / 集合行爲 / 社会運動 / 国際人口移動 / 剥奪論 / 差異 / 統合 |
Research Abstract |
本研究の目的は、フランスにおける都市暴動の発生の条件および過程について、通常そうされるように都市社会学の観点から研究するのではなく、集合行為論および社会的排除論の観点から研究することである。都市暴動の発生を失業、貧困、学業不振、劣悪な住環境、差別といった郊外の諸問題によって説明する都市社会学的な研究は、きわめて重要なものではあるが、それだけでは限界がある。なぜなら、それらの問題じたいは、都市暴動が出現し始めた1980年前後から現在にいたるまで一貫して存在するが、都市暴動が頻繁に発生し始めたのは90年代以降だからである。この現象の十全な理解のためには、郊外の諸問題にたいする当事者たちの行為様式の変容という点からも考察しなければならない。 研究一年目であった昨年度で、排除された移民の若者にとって異議申し立ての手段が社会運動から都市暴動に変容していった過程を集合行為論の観点から分析した。研究二年目である今年度は、1960年代に大量に発生した北アフリカからフランスへの移民の背景にある脱植民地化(とりわけアルジェリアの独立)を視点に入れて研究を行った。それによって「移民」と一括されている人びとの多様性に注目し、移民の連帯および社会運動の組織が困難な理由がより明確になると考えたからである。2011年6月に刊行予定の『アジア遊学』に掲載される論稿で、アルジェリア独立戦争中、フランス側についた現地住民(アルキ)とその他の移民との複雑な関係について論じた。 次年度は、都市暴動の発生メカニズムをアメリカやイギリスにおける人種暴動との異同も視野に入れながらさらに詳細に検討し、郊外における若者たちの集合行為についてまとめる予定である。
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Research Products
(1 results)