2010 Fiscal Year Annual Research Report
生きられた法と辺境のダイナミズム―環境正義と公共性の社会学的研究
Project/Area Number |
21730422
|
Research Institution | Tohoku Gakuin University |
Principal Investigator |
金菱 清 東北学院大学, 教養学部, 准教授 (90405895)
|
Keywords | 生きられた法 / 辺境 / 環境正義 / 公共性 / ダイナミズム / 環境の豊かさ / 法支配 / 場所性 |
Research Abstract |
法外世界が、いまや法支配を標榜する近代国民国家の間隙に深く浸透しているように思われる。なぜ研究で「法外世界」が今日問題となるのか。数千万人ともいわれる大規模な難民の出現に表れているように、法外世界を例外的な状態としてとどめず、むしろ「常態」化された世界としてとらえ、その可能性と展開を提示することが、環境問題の現場において以前にもまして重要性を帯びているといえるからである。本研究では、単なる法制度の一解釈というレベルをこえて、法外における常態世界の実相に即しながら、今ある法律をどのように最大限活用していくのか、という点において、法外世界と法制度を結ぶ結節点としての「場所」を設定するものである。この場所を設定することで、具体的な生活環境の権利を保障することができうると考えている。 上からの「公共性」でない、地域からの「公共性」、別の言い方をすると、手続き上の「公共性」でない、「環境の豊かさ」を生み出す"深い公共性"をどう再構築していくか、という現代的な課題と通底するものである。政策の寄ってたつ法律が「グレーゾーン」にあるとき、どのように行政は社会的弱者や劣悪な環境にアプローチするのかという点に着目して、「地域から公共性をどう組み立て直していくか」について実証を踏まえた政策論の提示を試みる。今年度は具体的に兵庫県伊丹市旧名旧中村地区、兵庫県西宮市夙川、岩手県遠野市、宮城県石巻市北上町十三浜地域を中心に行政や住民の方々から聞き取りを行うことができ、一部図書(「第5章100年前の公共事業が引き起こす環境破壊-濁流問題と海の"カナリア"」舩橋晴俊編『環境社会学』)の出版および論文「権利性と公共性をともなった歴史的自然景観-夙川公園の桜を事例に」『人間情報学研究』として出すことができた。
|
Research Products
(2 results)