2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21730432
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
崎山 治男 立命館大学, 産業社会学部, 准教授 (20361553)
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Keywords | 心理主義 / 感情労働 / 再帰的自己 / 統治 / EQ |
Research Abstract |
本研究では、全体として現代社会において、対人援助が「心」へとシフトしていく有り様を感情労働論から解きほぐしつつ、支援実践において〈善き〉行為へと囚われていく機制を理論的・実証的に明らかにする土台を構築した。 具体的な理論的成果について述べていくならば、第一にはこれまでの自身の感情労働研究を引き受けつつ、その現代的特性として〈心〉の尺度化と心理学的な知の広まりによる統治論の系譜について、フーコーやローズの現代統治理論と感情社会学の権力論とを比較し、心理学的知をもって、〈知り〉つつ〈統治〉する再帰的自己の有様を明らかにした。第二には、これを踏まえつつ、既存の感情労働研究では、感情労働が疎外/幸福の二項対立で論じられていたのに対し、感情労働の遂行の中でリアル・セルフが形成される有様をあきらかにした。 次に実証的成果について述べるならば、第一には、2000年代のビジネス誌の言説分析の中で、EQに代表されるような通俗的な心理学的な知が、いかに上述した再帰的自己を形成しているのかを明らかにした。その中では、その知の効果の細分化=広範化といったことに加え、メリトクラシーの原理に絡め取られていく有様を研究した。第二には、前年度に継続してターミナル期でのケアに注目し、究極の感情労働の中での振り返りのあり方を考察した。 これらの成果は、拙稿「「心」を求める社会」に収録されるほか、平成23年度に書籍、論文の形で発表される。
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