2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21730432
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
崎山 治男 立命館大学, 産業社会学部, 准教授 (20361553)
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Keywords | 心理主義化 / 自己 / 社会調査 / 緩和ケア / 感情社会学 |
Research Abstract |
計画の最終年度となる本年度は、従来からおこなってきた心理主義化の進展に関する研究の蓄積をすすめた。また併せて、補完的な関係となる社会調査を素材とした、感情と社会調査のあり方、並びに緩和ケアにおける看取りの技法に関する実践知の分析を行った。 前者に関しては、これまでの本研究の成果をさらに深めつつ発展させるため、1990年代以降の雑誌メディアに現れる「心」に関する言説の収集を試みた。その上で、近年の社会学・哲学で展開されている統治論、自己論の成果を参照しながら、心理主義の進展が「自発的」に「人間力」を磨き、労働へ駆り立てていく自己を形成していくことを分析した。 後者に関しては、社会調査という関係を題材にしながら、調査する側-される側がいかに自らの感情をマネジメントするか、という原理的な問いがあることを確認した。その上で、「当事者」と形容されるような、社会的に一定の磁場がある調査対象者との関係が、同情でもなく巻き込まれでもなく、強いていうならば共感と名付けられるような関係が望ましいことを指摘した。 さらに、緩和ケアに関しては仏教ホスピスを対象としながら、看取りの場面において宗教が相互行為の資源として参照されることを通して、感情のコントロールのみならず、「良い」看取りが可能になりうることを示した。またそれを通して、看取りの場がホスピス内に留まらずに社会的ネットワークにも広がりうるものであることを示唆し、現在の相互行為や自己形成が必ずしも心理主義的知に依存しなくてもすむ可能性を示唆した。
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