2010 Fiscal Year Annual Research Report
里親制度研究―近未来の日本における家族概念の提唱とその展望
Project/Area Number |
21730437
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Research Institution | Kwassui Women's College |
Principal Investigator |
園井 ゆり 活水女子大学, 文学部・人間関係学科, 准教授 (40380646)
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Keywords | 里親制度 / 養育家族 / 社会的養護 |
Research Abstract |
本研究の目的は、里親制度の発展に向けた効果的な方策を、(1)「社会意識的要因」と(2)「制度的要因」の2つの視点から分析したうえで、最終的には、里親家族という家族形態から近未来の日本における家族概念として「養育家族(family of fosterage)」という視座を展望することである。本研究の課題は、札幌市及び九州・沖縄における「養育里親」を中心とした、聞き取り調査に基づき実施する。 本年度は、(2)「制度的要因」に対する分析を行った。制度的要因では里子の分析が主要な課題である。従って、まず最終的な調査結果(対象里親世帯数51のうち、現在措置中の里子88人)に基づき、里子の属性についてみると里子の平均年齢は約9歳、5割が実親家庭から委託されている。3割の里子に知的障がい等の障がいがあり、実親等による虐待・酷使が主な養護問題発生理由である。 次に、社会意識的要因について本調査の結果に基づき検討する。a.里親、里子の「マッチング」については、過去に里親へ委託された児童の委託終了状況についての分析から「措置変更」に至った場合は約8%にとどまっていた。ここから、本調査結果に限ると里親と里子のマッチングは適切に行われているのではないか、ということが推察される。b.養護問題の背景と実親支援については、養護問題発生の背景は、実親等による虐待・酷使が原因となっている一方で、虐待等を行った実親に対する教育制度や支援制度は不十分である実情が浮かびあがった。家族の再統合の観点から考えると子どもの保護と同時に親の教育を行うことは喫緊の課題である。c.里親に対する支援制度としては、各自治体によって差異があることが伺えた。調査対象地区内で政令都市と地方都市を比べると、政令都市の方が地方都市に比べ里親サロンなど里親に対する支援制度がより整備されていることが伺えた。d.社会の子育てに対する取り組みについては、改正児童福祉法により里親制度が拡充されたことは評価できるものの、家族の孤立化が進む現状に即して、子どもが要養護状態に陥る前に実親家族をはじめ子育て中の家族を支える経済的、社会的基盤を徹底する必要があることが確認された。
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