2011 Fiscal Year Annual Research Report
里親制度研究―近未来の日本における家族概念の提唱とその展望
Project/Area Number |
21730437
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Research Institution | Kwassui Women's College |
Principal Investigator |
園井 ゆり 活水女子大学, 文学部・人間関係学科, 准教授 (40380646)
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Keywords | 里親制度 / 子育て家族 / 子の社会化 |
Research Abstract |
本研究の目的は、里親制度の発展に向けた効果的な方策を、(1)「社会意識的要因」と(2)「制度的要因」の2つの視点から分析したうえで、最終的には、里親家族という家族形態から近未来の日本における家族概念として「子育て家族(family of child rearing)」という視座を展望することである。本研究の課題は、札幌市友び九州・沖縄における「養育里親」を中心とした、聞き取り調査に基づき実施する。 本年度は、これまでの研究総括を行った。まず、(1)里親制度の発展についての分析について。里親制度の発展には、里親に既になっている者については、a)里親サロン等を通して里親同士の連携強化が里親活動の継続において不可欠であること、またb)里子の実親との接触は繊細な課題であるため当事者間の意向を十分反映させた上で実施する必要があること、一般市民に対しては、c)里親制度に対する啓発活動を経常的に行うことで、里親家族の存在に対する認知度をさらに高める必要があることが明らかになった。実際、調査対象地域であった大分県と福岡市は、2010年の里親委託率がそれぞれ24.7%と19.6%と全国(10.3%)の値よりも高い。2005年に比べると、大分県は12.7ポイント、福岡市は9.2ポイントと大きく上昇した。この背景には、上記aからcの取り組みが活発になされていたことが存在する。(2)近未来の日本における家族概念の提唱とその展望について。長期の養育里親家族は今後「子育て家族」という新しい家族形態として機能することが証明された。「子育て家族」は子の社会化機能が適切に遂行されない家族にかわり、里子に家族の規範を教示することにより、子の社会化という家族に求められる機能を次世代に継承する役割を果たしている。この意味で、「子育て家族」は近未来の日本において家族機能の再生を可能にする1つの家族形態として展望される。
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