2011 Fiscal Year Annual Research Report
育児の社会化と女性の労働:市場と公共領域における育児支援サービスの比較研究
Project/Area Number |
21730440
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
酒井 千絵 関西大学, 社会学部, 助教 (30510680)
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Keywords | ジェンダー / キャリア再構築 / 育児の社会化 / 福祉 |
Research Abstract |
最終年度である平成23年度は、21、22年度に行った国内および香港での調査結果をふまえ、育児および家事労働に対する支援サービスのあり方を検討した。 国内については、主に自治体が外部のNPOに業務を委託しながら、妊婦や母親に対する育児支援を行うのが一般的である。今年度は、平成21年度まで3年間行った妊婦向けの「母親学級」「両親学級」でのキャリアセミナーを見直し、再就職を検討する女性向けを対象に託児付きキャリアセミナーを2年度にわたって行った大阪市の取り組みを、調査した。2年度目の開催となった平成23年度は、各区3週連続のセミナーを1回行った。前年度は一部補助の有償であった託児を無償としたことで、これまで乳児を預けることに強い抵抗感を持っていた層を、育児以外の活動に向けることに成功し、いわゆる「密室育児」によるストレスを抱えていた参加者に歓迎された。参加者の一部は、セミナー以降大阪市が行う他の教室や活動に参加したり、具体的に再就職に向けて調査や準備を始めたりしており、自分の社会関係を積極的に再構築する契機になったことを、講座を企画運営した(財)大阪市女性協会は高く評価していた。しかし、大阪市の事業見直しにより、このキャリアセミナーは23年度限りで中止となり、翌年度以降は既存講座の枠内で行うことが検討されていた。この事例は、育児中の女性が孤立やキャリアの途絶等問題を抱えていることが再確認されたこと、またこれまでは地方自治体が支援の主体となってきたが、政策の変更が事業の継続に大きな影響を持つ中、支援のための財政基盤をいかに確保するかが重要な課題として浮上している。 また、これまでの調査から、子どもを持つ女性への支援が、1)母親への育児技術や情報の提供から、2)孤立しがちな母親に人的ネットワーク再構築の支援を行うことへ、さらに3)キャリアの見直しや経済的自立への支援へ、と拡大しつつあることが分かった。しかし、3)への支援は、従来の公共的な支援や福祉の枠を越える側面を持つため、今後こうした支援をいかに運営していくかが課題となっている。
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Research Products
(1 results)