2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21730449
|
Research Institution | Fukuoka University of Education |
Principal Investigator |
久本 貴志 福岡教育大学, 教育学部, 准教授 (90452705)
|
Keywords | 労働力仲介機関 / コミュニティ・カレッジ / ワンストップ・センター / 福祉政策と労働市場政策の連携 / 公的扶助 / 労働力投資法 |
Research Abstract |
本研究は,アメリカの州および地方レベルにおいて,低所得層に対する労働力仲介機関の就労支援がどのような形でおこなわれ,どのような成果をあげているのかを明らかにすることである。利用者のニーズにあわせて職業訓練もしくは職業紹介を提供する方針のオレゴン州を調査した昨年度に続いて,本年度は,職業訓練を重視し始めたミシガン州と職業紹介を重視するニューヨーク市で現地調査をおこなった。ミシガン州では,デトロイト市近郊のワンストップ・センターとコミュニティ・カレッジにおいて調査をおこなった。ここからは,訓練を重視してきたものの不況による労働需要の不足により効果を発揮できていないこと,財源がつかず訓練重視の方針が継続できない点が明らかになった。ニューヨーク市における調査では,コミュニティ・カレッジは公的扶助受給者を対象としたプログラムにおいて教育・訓練を重視している。さらにニューヨーク州によるCareer Pathwayという公的扶助受給者等への教育・訓練を拡充する施策を活用して,ニューヨーク市のNPOはそうした人びとに教育や訓練を提供している。他方で,労働力投資法によるサービスを管轄する中小企業サービス庁は職業紹介を重視していた。ニューヨーク市においては,福祉政策と労働市場政策の連携が十分にとれていなかった。これらの各州における就労支援の成果であるが,調査の範囲では,各訓練を実施する機関が長期間の追跡データ(数年単位の賃金上昇率等)を十分に把握していないと思われる。また,調査期間が不況期であり,それによる需要不足のため各機関とも就労に結び付けるのが困難な時期であった。就労支援の成果を検証するために,今後も調査を行う必要がある。また,研究の過程で,雇用創出策と就労支援の整合性や就労困難層への支援についてそれぞれ論稿を執筆できたので,今後それらを深めていきたい。
|