2009 Fiscal Year Annual Research Report
戦後ドイツ社会政策の理論と実際に関する研究―社会的市場経済との関連から―
Project/Area Number |
21730450
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Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
森 周子 Saga University, 経済学部, 准教授 (00433673)
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Keywords | ドイツ / 社会的市場経済 / 社会政策 / オルド自由主義 / キリスト教社会論 / 新社会主義 / Gesellschaftspolitik論 |
Research Abstract |
本研究の目的は、(1)戦後ドイツの経済政策・社会政策の基本原則及び理念である「社会的市場経済」概念の影響下での社会政策論の展開の整理、(2)実際の社会政策が、社会政策論の展開及び時代状況の変化をどのように受けたかを考察すること、である。 1年目の本年度は、戦後ドイツ社会政策論の変化を、社会的平衡(社会的市場経済で是とされる社会政策)に関する3つの見解に着目して整理した。ここでは、3つの見解を、それぞれの主要な論者の名をとって、オイケン型、ミュラー=アルマック型、エアハルト型と称する。オイケン型は社会政策=経済政策(秩序政策)と捉え、ミュラー=アルマック型は社会政策=経済政策+再分配政策(経過政策)と捉え、二次分配を重視する。エアハルト型は社会政策=経済政策+再分配政策+自助促進のためのインフラ整備と捉え、二次分配よりも一次分配を重視し、前者から後者へと力点を移すことを主張する。 戦後ドイツ社会政策論の主流は、1970年代半ば以降、ミュラー=アルマック型からエアハルト型へと移行した。近年では一次分配重視(ワークフェア)が顕著であり、就労支援が推進されている。だが他方で、二次分配重視のミュラー=アルマック型の要素も残存しており、またエアハルト型自身も二次分配を尊重している。ゆえに、戦後ドイツ社会政策論は、二次分配重視と一次分配重視を同時並行的に追求するという特徴を有する。 また、社会的市場経済と関連する4つの思想(オルド自由主義、キリスト教社会論、新社会主義、Gesellschaftspolitik論)が戦後ドイツ社会政策論に与えた影響も考察した。その結果、前三者が3つ巴となって大きな影響を与えてきたのに対し、後-者は、1970年代までの時期に、狭義(労働者対象)から広義(全国民対象)への社会政策理解の転換を定着させるという役割に留まり、現在ではその影響は限定的であることが明らかとなった。
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