2010 Fiscal Year Annual Research Report
EUの均等(差別禁止)法政策と人権保障の新たな展開に関する研究
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21730466
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Research Institution | Den-en Chofu University |
Principal Investigator |
引馬 知子 田園調布学園大学, 人間福祉学部, 准教授 (00267311)
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Keywords | 均等法政策(差別禁止) / 社会福祉 / 社会的排除 / EU(欧州連合) / 社会政策 / 国際条約(障害者権利条約) / 人権 / 年齢・障害・人種/民族・信条/宗教 |
Research Abstract |
平成22年度の研究では、平成21年度末に行ったEU諸機関や研究者およびNGOにおける訪問調査の結果をまず整理し、これを補足するさらなる資料収集と包括的な分析を行った。分析の具体的内容として、(1)EU均等法政策の主要かつ新たな柱のひとつである、「合理的配慮」の実施内容やこれに対する社会的支援、(2)同法施策に影響を与えるEUによる国連条約(障害者権利条約)の正式確認(批准)と、全加盟国が合意したEUと加盟国の権限分配と範囲・内容等を示す「行動規範」の検討等があげられる。これらの研究から、EU域内の複層的なガバナンスを通じた新たな人権保障のあり方と、これが個々人の生活(社会・経済的な参画等)及び、社会全体に与える影響について明らかにした。分析結果については、随時、口頭発表や論文として公表した。日本においても新たな均等法制の導入が議論されている。EUの先駆的な実践を明らかにする本研究は、同議論に多くの示唆を与えるものとなった。 平成22年度は、以上のように前年の研究をまとめて公表しつつ、雇用・就労分野のEU均等法政策と人権保障の研究をさらに深めた。同時に、モノ・サービス・教育等の分野の均等法政策や、審議中の新均等指令案ついても研究を広げた。社会的に不利な立場にある人々(「年齢」・「障害」・「人種・民族」、「信条・宗教」、「性的指向」の事由に関わる人々)の社会的包摂において均等法が果たす役割、さらには、均等法を取り巻く社会的支援の枠組(EUのブロック・エグゼンプションや社会保護関連法規等)、欧州社会基金等を通じた加盟各国における同領域のパイロットプロジェクト等の把握も行った。この過程で、EU諸機関および加盟国における関係機関における調査を実施した。 平成21年度の研究結果の一部は、すでに論文等により公表した。今後、本研究を総括した内容を公表予定である。研究全体を通じ、EU諸機関等の関係者と関係を築き、これにより得られた最新の見解を検討し報告した点や、これらEU関係者と日本の関係者を相互に繋ぐ機会が随時あった点も本研究の貢献と考えられる。
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